夜少年たちは月読峠をすっぽり包む霧のような不思議に迷い込んでいく――細やかな設定や描写によって、舞台となる「月読峠」の不思議へ入り込んでしまう。
冒頭の語りかけから少しずつ明かされる世界観は多くの謎を含んで、読者を愉しげに手招きしています。
一方で、登場人物たちの感情は生き生きと鮮烈で、月読峠の謎に負けない作品の魅力になっています。特に夜少年たちの会話が軽快で、少し毒のある七巳のやりとり、古書店の主・池水の謎めいた語りかけ、どの言葉も軽快で面白く、月読峠の世界観を形づくっています。
主人公に迫る不穏な伝承、日常に潜む謎と魅惑的な言葉に導かれる、現代ファンタジーでした。丁寧に考え抜かれた言葉とその意味を知りたくなって、ぼうっとその言葉が頭を反復する物語でした。