二ノ前はじめ先生の書は、
カンバス一面に大きく絵を描くスタイルではない。
むしろ真逆で、広大なカンバスに不釣り合いの、緻密な赤い点を描くかの如くである。
これがこの先生のスタイルだ。読んだ人は、それを、『真っ白なカンバス』とは決して呼ばないだろう。
『赤い点』と呼ぶだろう。
物語の舞台は真冬。
気温も低く、暖房の効いたバイト先に急ぐ主人公が、通勤途中のガードレール下にできた水溜り、その水面下で助けを求める少女を見つけてしまったと言う物語である。
なぜ、そんなところに?
どうして、そんなことに?
彼女は、何者なのか!?
物語はそこには一切触れず、過不足なく不穏な空気と不気味さ、そして不条理を過不足なく突きつけてくる。
この、触れない部分が先ほど言った、カンバスの空白の部分である。
赤い点に何を書き足すのかは、書を手にした私であり、あなたつまり読者なのだ。
ところで、物語の主人公は、最終的に凍結し、少女が助けを求める氷の水たまりを割るところまでは描かれている。
そこから先はまた真っ白な暗闇である。
読むことから始まるホラー。
この先生の専売特許と呼べるだろう。
ご一読を。