物語の魅力を一言で表すなら「主人公が立っている」ことでしょう。
何でもやってみたいお年頃の女の子がいろいろな事件に首を突っ込み、解決します。
万能に見えて、気分屋です。
オティーリエと関わった人たちはみんな振り回され、最後は彼女の虜になります。
彼女はいつもまっすぐで、太陽のように周りを照らします。
こんな友達がほしいと思います。
あと、孫を自慢したくなるような気持ちになります。
オティーリエは14歳の侯爵令嬢です。
ああ、令嬢ものね……。
違います。
婚約破棄も断罪も無双もステータスウインドウもありません。
その代わり、謎解き、友情、ロボット、愛玩動物……。
ファンタジーの中に科学が混ざった世界が丁寧に描かれていて、日本から飛行機で行けるのではないかと思うほどです。
主人公の脇を固める人たちもいい人がそろっています。
安心して浸ってください。
オティーリエがすごくいい主人公で、気になることがあったら我慢できずに飛び出してしまうのに、飛び出した先で役に立つ行動を取るのがえらい。
感情で動いているようで実は緻密に考えてる子だと、爺やとのやり取りで特に伝わってくる。領主代理として凛とした姿を見せる場面、14歳の子があんなにビシッと言えるのは格好いい。
ヨハンがいいツッコミ役で、彼がいるだけで話が締まる。オティーリエが無茶してもいつも地に足のついた対応をしてくれるので、読んでいる側も安心して見ていられます。
世界観の作り込みも好きで、蒸気機関と魔法が混在している設定が自然に語られていて、説明くさくなっていないのがすごい。
物語に精通した確かな知識によって構築された世界観の中で、好奇心旺盛な主人公の令嬢が様々な出来事に直面していきます。
前半から蒸気剣や蒸気戦斧といったレトロフューチャーな情景に迎えられ、読んでいるだけでモクモクと蒸気が届いてくるかのような心地がしました。
騎士団や魔獣の世界に飛行機が登場するなど、古今東西の物語のあらゆる要素が豪華なまでに詰まり、さらに事件や捜査、犯人探しと息つく暇もない豊かな仕掛けに満ちてます。
知的にまとまったエピソードは安定感があり、まるで19世紀の完成度の高い推理小説を読んでいるかのような気持ちになりました。
やはり魅力は興味津々に足を運んでいく主人公と、緊張をほどよく中和するかわいらしいリス。
まだすべてを読み進めたわけではないものの、きっと映像で観たらさらなる面白みを体験できるのではないかなと空想したものです。
異世界ものが好きな人も、推理ものが好きな人も手放しで楽しめる、読み応え抜群の物語です。