桜は咲いたか、梅はまだかいな。
春が待ち遠しくなる。
そんな作品にございました。
まずロケーションが最高なんですよ。路面電車というね。
あの、読書が絵になる風景は一体なんなんでしょうな。
そんなところで、向かいに座る女の子が読書をしている。
外は先かけの桜だ。
こんなん、気にするなという方が無理な話でね。
しかし主人公の僕はこれといって文学少年ではない。
憧れのあの子のブックカバーの向こうにな、何があるんだろうナア。
ドストエフスキーの罪と罰かなあ。
三島由紀夫の金閣寺。もしくは近代能楽集「邯鄲・班女」かなあ。
谷崎潤一郎の蓼食う虫かなあ。
一方の僕は今日もライトノベル。
声をかけても、釣り合わないんだろうナア。話が合わないだろうナァ……
それでも路面電車は少年のままならない憧れと、もどかしさと、二人と二冊の文庫本を乗せて走る。春の陽気の中を走る。
しかし……少女が読んでいたものは……。
もーたまらんです。
もう二月も中頃。
気がつけばほら、もう、春が来ますよ!!
ご一読を。
心の中がふわふわっと、青春特有な昂揚感でいっぱいになります。
主人公は路面電車で通学する。他校の女子で気になっている子がいて、いつも本を読んでいるのがわかる。
自分も本を読んでいるけれどライトノベルのミステリー作品。相手は高尚な文学とかだろうかと考えていた。
でも、ふとした瞬間に転機が訪れて。
気になってはいるけれど、ずっと接点が持てないでいた。そんな彼の前に訪れたチャンス。
そこで勇気を出して、という姿が心を揺さぶります。
きっともう、この日は胸がいっぱいで仕方ないだろうな、というのがありありと想像できます。
気になっていた女の子と話をすることができた。自分の世界と相手の世界が繋がった。それは日常が非日常、現実が理想と繋がった日とも言える。
そんな日常の中にある「奇跡」を描いたワンシーン。爽やかさいっぱいで心が洗われる作品でした。