6. 不思議クラブとソウタのパス

田名橋 光

第1話 サッカーワールドカップ

五年二組の教室は、

朝から、いつもより少しにぎやかだった。


「昨日の試合、見た?」

「最後のパス、すごかったよな!」


教室の後ろのほうで、

男の子たちが身ぶり手ぶりを交えて話している。


どうやら、

サッカーのワールドカップが始まったらしい。


京子は、

自分の席にすわりながら、

その声をなんとなく聞いていた。


「サッカーかあ……」


京子は、

サッカーにくわしいわけではない。


ルールも、

全部はわからない。


でも、

昨日の夜、

テレビをつけっぱなしにしていたとき、

少しだけ、

ニュースを見たのを思い出した。


日本代表のキャプテン、

大森選手が、

インタビューに答えていた。


マイクを向けられて、

記者が聞いていた。


「得点につながる、

素晴らしいパスでした。

どういうことを意識して、

パスを出しているんですか?」


大森選手は、

少し考えてから、

落ち着いた声で答えていた。


「頭の中にできたイメージを、

そのまま、

写し出すような感じですかね。

それと――

大事なことは、

パスだってことです」


「パス、ですか?」


「ええ。

ひとりじゃ、

ゴールはできませんから」


京子は、

その言葉を聞いたとき、

なぜか、

少しだけ立ち止まるような気持ちになった。


「パスって……

そんなに大事なんだ」


そのときは、

それ以上、

考えなかった。


チャイムが鳴り、

先生が教室に入ってきて、

話題は、

すぐに別のことに移っていった。


でも――

京子の心のどこかに、

その言葉は、

小さく残っていた。

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