まるで昔話を聞いているような、静かで美しい語り口に引き込まれました。
病に苦しむ娘を救うため、神秘の実を探して森へ入った旅人。そこで語られる、ひとりの奴隷の娘の物語が、とても切なく、胸に残ります。
人を癒す力を持ちながら、そのたびに自分自身を削っていく少女。
誰かを救いたいという優しさは尊いものなのに、その優しさに周りの人々が少しずつ甘え、すがり、当たり前のように求め続けてしまうところが、とても痛ましかったです。
白滝ねこ様の文章は、残酷なことを大きな声で叫ぶのではなく、静かな語りの中でじわじわと読者の心に染み込ませてくるところが魅力だと思います。幻想的でありながら、人の弱さや願いの重さがしっかり描かれていて、読み終えたあとも深く考えさせられました。
これは、ただの悲しい聖女の物語ではありません。
人を救うとはどういうことなのか。
優しさを受け取る側は、どこまでその人に求めてよいのか。
そんな問いが、静かな森の奥からこちらを見つめてくるような作品でした。
幻想的で、美しくて、少し哀しい。
読後に長く余韻の残る、とても印象的な一作です。