追放された規格外スキル【鑑定】で、俺は異世界のダンジョン配信者になる

@hogehogeta

プロローグ 過労死、そして異世界へ

 田中誠一、三十二歳。独身。

 職業は――いや、だった、と言うべきか。


 俺は今、真っ白な空間にぽつんと立っている。

 さっきまで会社のデスクで残業していたはずなのに。


「……死んだのか、俺」


 思い当たる節しかない。

 ここ三ヶ月、まともに家に帰った記憶がない。睡眠時間は一日平均三時間。食事はコンビニのおにぎりとエナジードリンク。上司からは「お前が抜けたらプロジェクトが回らない」と言われ続け、断ることもできずに働き続けた。


 いわゆる、過労死というやつだろう。


『その通りです』


 突然、頭の中に声が響いた。

 振り返ると、そこには光り輝く人型の存在がいた。顔も体の輪郭もはっきりしない、まさに「神々しい」としか言いようのない存在。


『田中誠一さん。あなたは過労により命を落としました。享年三十二歳。お気の毒に』


「いや、気の毒って言われても……」


『ですが、ご安心ください。あなたには選択肢があります』


 神らしき存在が、ゆっくりと手を広げた。


『このまま成仏するか、それとも――異世界に転生するか』


「異世界転生……?」


 漫画やラノベでよく見るアレか。

 主人公が神様からチートスキルをもらって、異世界で無双する話。


『お察しの通りです。あなたには特別なスキルを一つ授けましょう。さあ、何がいいですか?』


 何でもいいのか。

 それなら――


「じゃあ、【無限の魔力】とか【時間停止】とか……」


『申し訳ございません。それは在庫切れです』


「は?」


『最近、異世界転生者が増えすぎまして。人気のスキルはすぐになくなってしまうのです』


 なんだそれ。神様のくせに在庫管理もできないのか。


『現在お渡しできるスキルは――【鑑定】のみとなっております』


「鑑定……? それって、ものの値段とか見るやつ?」


『はい。対象の情報を見ることができます』


 地味すぎる。

 いや、でも異世界転生自体は本当らしい。このまま成仏するよりは、新しい人生を試してみるのも悪くないかもしれない。


「……わかった。それでいい」


『ありがとうございます。では、良い異世界ライフを』


 光が俺を包み込む。

 意識が遠のいていく中、俺は思った。


 ――まあ、地味なスキルでも、前世よりはマシな人生になるだろう。


 その予想が、いい意味で大きく裏切られることになるとは。

 この時の俺は、まだ知らなかった。

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