とある理容室で。店主が器用に手を
動かしながら、理容師になる以前の話を
軽妙に語って行く。
高校を出て精肉工場で、来る日も来る
日も 丸鶏 を捌くが。
そこに意地の悪い先輩がいて散々な
嫌がらせをされたという。
きっと、その時に閃いたのだ。
軋轢もあって精肉工場を辞め、鮮魚店で
今度は魚を捌くも、何かが 違う と
一念発起。今や理容店を経営して八年に
なるのだと。
常に刃物を扱う仕事で、何かが違う。
切りたいのは それら ではなく。
そんな話を身動きも取れない上、首に
刃物を当てがわれながら聞かされる客の
心理に同化してしまう。
危うい状況に、息を詰めて読み進むも
最後の一文でゾッとさせられる。
幽霊や化け物は出て来ないけれど、
まさに怪談の妙味。