第7話


③ 移動


バスが走り出すと、

同期はみんな、今にも眠ってしまいそうな顔をしていた。


その空気を切るように、

Sが声を上げた。


「えー、では今から、

全員で自己紹介をしてもらいます」


「名前、学生時代の部活、

それから長所と、

人からどんな人だと言われるか」


一瞬、

(マジかよ……)

という空気が、車内を満たした。


その沈黙を待つことなく、

Sは続ける。


「はーい!

まず俺からね?」


「普通こういうのって、

すぐ挙手するものでしょ?

眠そうにしてるんじゃないよ?」


沈黙。


「俺は!

あっ……ワタクシは、Sと言います」


「人を楽しませることを得意としてます。

今この瞬間も、

どこに到着するのか楽しいと思ってます」


「このスリル感も最高だと思います」


「一泊二日、

楽しい思い出づくりを共にしましょう!」


「学生時代は野球部の副部長をしてました。

みんなにお茶を配ったり、

選手のサポートをしてきました」


(……???)


ツッコんではいけない。

笑いをこらえる。


副部長で、お茶出し?

それ、マネージャーじゃないのか。


野球部なら、

キャッチャーをやっていたとか、

そういう話になるはずだ。


なんだ、この人……。


ふと振り返ると、

笑いそうになっている同期がいた。

たぶん、ボクも同じ顔をしている。


Sはすかさず、指を向けた。


「次、まとい!」


……指名された。

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