ドラゴン退治の裏側が異種族間の外交だったという転倒。パレードの歓喜がそのまま嘘ではないのに、真相を知ると全く違う絵になる。青顔のドラゴンの告白により、この取引が復讐でも政治でもなく、喪失から始まっていたとわかる。掟破りの同族を自分たちで裁けない無力さを「情けない事ではありますが」と言わせる筆致が静かで良い。
王道の英雄譚をメタ的な視点で再構築した掌編である。凶悪なドラゴンを討伐した英雄たちの栄光の裏側に、人間とドラゴンの利害一致という現実的な政治背景を描き出している。龍の姿では力を出せず、真の姿では人間に狩られるというドラゴンのジレンマや、金塊による「報酬」の授受といった設定が、ファンタジーの定石に一捻りを加えている。短い文章の中に皮肉と調和が凝縮された一作だ。王道展開に捻りを求める読者や、物語の「裏側」のロジックを好む者におすすめできる。
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