モカートの歌
◇………………………………………………………………………
『――――【
アルソンは走っていた。
走りながら
「おうテメエら!武器は持ったか!?ポーションもかかしてねぇだろうな!?」
そんなアルソンを横目に、グリムハットが声を張り上げる。
彼の周囲では、商会の冒険者達が疲労を濃く滲ませながらも必死に足を動かしていた。
当のグリムハット自身も、使い込まれた剣を片手に走っている。
彼等は村人達が魔物に攫われたことに気付くのが遅れ、慌てて装備を整えてやってきたのだ。
「ったく!先走りやがってガキどもが!」
悪態をつくグリムハットだったが、別段怒っているわけではない。むしろすぐに動いてくれたモカ達に感謝すらしていた。
彼等が動かなければ、攫われた村人達の安否は厳しいものとなっていただろう。
アルソン以外の人間がいるところでは弱みを見せず、自分を優位に見せる言い方をしてしまうのは彼の癖だった。
「まぁあれだ、ガキの尻拭いをしてやるのが大人の役目ってやつだな。」
「いや、むしろ尻拭いしてもらってるのはこっちですし、実際働いてるのは俺っす。」
「うるせぇ!」
アルソンの文句も尤もなのだが、グリムハットからすればアルソンは自分と一心同体なのだ。
ルーンの発動は、出遅れた彼等の僅かながらものモカ達への援護だった。
「来たぞ!」
「総員、手早く仕留めるっすよ!」
じゃれ合いをしていると、ルーンの効果に惹かれた魔物達が駆けてくるのが見えた。
「気合入れろよ!」
「この後、ボスも待ってるんすからね!」
クンストメルの冒険者達と魔物がぶつかった。
◇………………………………………………………………………
走る。走る。走る。
だた一人、敵を目指して。
周囲の魔物には目もくれない。
視界の端にちらりと映る、鎖や拳や魔法がそれらを自分に近付けさせないことを知っているから。
モカの思考はただ一つ。
速攻でボスを斃して、一刻も早くリルルーラを治療する。
それだけしか考えてはいなかった。
ミルホーテ側からすれば理不尽なことだろう。
客観的視点で見ると彼等は被害者だ。人間の都合で
弱肉強食。自然の摂理といえばそれまでだが、被害者からすればたまったものではない。
だがそれでもモカは刃を鈍らせることはない。
魔物は人類の明確な敵対者であり、それを討伐することこそが冒険者の仕事だ。
なによりこいつらはリルルーラに手を出した。
純粋で可愛らしい、己が守るべき者に牙を立てたのだ。
モカが剣を振るう理由は、それだけで十分だった。
「Goaaaaaaaaa――――――――!!」
ミルホーテの咆哮が肌を打つ。
モカの進みは、一切緩むことはない。
そして、モカの口がゆるりと詩を紡ぎ始める。
『鬨の声を上げろ。』
「わっはぁ!?マジ!?」
魔物に拳を叩きこみながら、サノンが驚愕と興奮の入り交じった歓声を上げる。
『手には剣を、心に忠誠、背に
「ま、そうじゃないかとは思ってたけど。」
壁に背を預けたマリエルが呆れたような、羨望を含んだ声を吐息と共に吐き出す。
『我らは聖騎士、王に傅く十二の聖剣。』
「やっぱりやっぱりやっぱり!あの時感じた違和感は間違ってなかった!あの形状変質は
マリエルの傍で魔法を放っていたポムニットが、目を血走らせて口から品性を垂れ流す。
『この戦いを
「さあモカ、やってしまいなさい。」
ラテが最後の魔物を縊り殺しながら微笑む。
『我が奮戦をどうかご照覧あれ。』
「Gorrrraaaaaaaaa――――――――!!」
ミルホーテが怒りの中に焦りを帯びた咆哮を上げる。
『――――【
紡がれた
モカの全身が光を帯びる。
神聖で、侵し難い光の粒が白く照らし出す。
手にした剣は、聖性を感じさせる聖剣に。
身に着けた服は、聖者の衣のように汚れなく。
そしてその肉体は、正しく聖騎士といった誇り高さを纏っていた。
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