第7話




 ◇―――――――――――――――――――――――――――




 村を旅立った二人と一頭は、緩やかに続く街道を進んでいた。

 天気は彼等の旅立ちを祝福するかのように快晴。

 吹き抜ける風が草原の花々の香りを纏いながら頬を撫でる。

 春の暖かさを感じさせる、絶好の旅日和だった。


「う~ん!」

 モカは大きく伸びをしながら、胸いっぱいに空気を吸い込んだ。

 普段と変わらない筈の空気も、旅の興奮からか、いつもよりおいしく感じられた。

 ウキウキした様子で歩く姿は、明らかに浮かれており、これから始まる冒険に胸躍らせる年相応の幼さが見えた。


「さて、こうして旅立った訳ですが、これからのことをもう一度確認しておきましょう。」

 モカの様子をニコニコと見守っていたラテが口を開く。

 浮かれていたモカも、その真剣な内容に居住まいを正す。


「私達はこれから、正式に冒険者として活動するわけです。」

 旅立つ前に幾度も確認した今更なことであったが、大切なことは再三確認するべきという心構えで、ラテは二人のこれからについて語る。


 冒険者。

 それは危険が溢れるこの世界において活動する、職業傭兵の一種だ。

 危険な魔物を狩り、未知のダンジョンを進み、手に入れた報酬で生計を立てる、何処の国にも一定以上の割合で存在する一般的な職業だった。

 国が認めるれっきとした職業であるが、その門戸は広く、十歳を超えていれば誰でも冒険者になることができる。現にモカとラテも十歳になった時点で冒険者登録を済ませていた。

 一般的に冒険者は荒くれ者というイメージも強いがそれは一部に過ぎず、別の職種に就く者が兼業していることもあれば、冒険者から国の騎士に勧誘される者もいるため、特に忌避されたり下に見られたりする職業という訳ではない。


「先生に指導を受けたとはいえ、私たちはまだまだ一端いっぱしとは言えません。

 目的地に着くまでの道中、積極的に冒険者として経験を積んでいきましょう。」

「うん。実際、先生の引率なしで旅したことはないもんね、僕ら。」

 自力での初めての旅であるからこそモカは浮かれていた訳で、そのことを自覚し、気合を入れ直す。


「とはいっても、そんなに気負わなくていいとも思いますけどね。

 私達なら問題なく旅ができると思ったからこそ、先生も許可を出したのでしょうし。

 まずは最初の目標地、モント村を目指しましょう。

 この調子でいけば、明日か明後日にはたどり着けるはずです。」

「よし!じゃあ元気出して出発だ!」

「ふふ、頑張りましょう。」

 元気良く歩き出すモカ。

 微笑みながら続くラテ。

 ヴェェと、間の抜けた声で鳴くバリー。

 彼らの旅路は始まったばかりだった。


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