第41話: 奪還



鐘が鳴った、その直後だった。


闇を切り裂くように、

空から一本の矢が降る。


見張り兵の喉を、正確に射抜いた。


「――敵襲だッ!」


叫びは最後まで届かない。

二本目、三本目。

サイラスの放った矢は、音より速く兵を倒していく。


砦の上空。

ヴァルキリー隊が旋回し、そのまま一気に高度を下げる。


「行くぞ」


サイラスの声と同時に、

彼は抱えられたまま放り出されるように降下した。


着地。

一歩。

二歩。


――もう、そこにいた。


「ひっ……!」


警備兵が剣を構えるより早く、

サイラスの槍が地を滑る。


柄打ち。

一撃。


鎧ごと吹き飛び、壁に叩きつけられる。


「ま、待ってくれ!命だけはっ」


数人の警備兵が武器を捨て、地面に伏す。


「命だけは……頼む……!」


サイラスは足を止めない。


ただ一言。


「牢を開けろ」


「は、はいっ!」


鍵束が投げ出される。

震える手で、警備兵は次々と扉を開けていく。


抵抗は、もうなかった。

圧倒的な力の前で、戦意は完全に折れていた。



薄暗い通路の奥。


サイラスは、ある扉の前で止まる。


「……イーリス」


名を呼んだ瞬間、

イーリスが、はっと顔を上げた。


「……え?」


信じられないものを見る目。


「……サ、イラス……?」


声が、かすれる。


鍵が回る音。

扉が、開く。


次の瞬間――

イーリスは走り出していた。


途中で足がもつれ、よろける。

それでも、止まらない。


「…まさかとは思ったが、感謝する…」


サイラスは何も言わず、

ただ強く抱きしめた。


細くなった体。

それでも、確かにここにいる温もり。


「……生きててくれて、ありがとう」


イーリスの嗚咽が、

静かな通路に広がった。


フェリックスは壁に背を向け、

「うん。大丈夫っす……」と誰にも聞かれない声で呟く。



しばらくして、サイラスはイーリスを支えながら歩き出す。


「もう一人だ」


辿り着いた、別の牢。


中は奇妙に整っていた。

椅子、机、そして――椀。


「おお!」


男が顔を上げる。


「勇者サイラスよ!

そなたのけいけんちは――」


サイラス「… …?」


「つぎのレベルまで2580ポイントのけいけんちが必要じゃ!…」


一同

「…!?」


イーリスは固まる。

「いったい何のこと!?」


「いや、アルベルト。今はドラ◯エじゃないんだ。」


「うむ」


サイラスは言う。


「…システムのお約束はいい。帰るぞ」


アルベルトは立ち上がろうとして、

ふと椀を見る。


「……しかしな、ここまでを冒険の書に記録するかね?」


そしてチラッとスープを覗き込み、少しだけ困った顔。


「あとな?…これが、まだ途中なのだ」


「王たる者、食事を残すのはな…こんなに美味いスープ滅多に食えんからなぁ (いやしい…)」


「(おほんっ)…アルベルト」


サイラスが遮る。


「今回は、外に出る」


その言葉に、

アルベルトは静かに笑った。


「なんと!ワシはいつも椅子に座っているだけだでの、歩き回るのは久しぶりじゃ」


椀を置き、

初めて椅子を離れる。


「案内してくれ、勇者よ」



門が開く。


解放された罪人たちが、

ざわめきながら外へ流れ出していく。


その陰で――

フェリックスは限界だった。


「……あぁ…良かった!!…限界!漏れるっす……」


物陰に駆け込み、

ようやく用を足す。


「フェリックス!待たせた!すぐに戻るぞ!」


「……え?でも

 ラミエルや他の人たちは…どうするっすか…?」


サイラスは即答する。


「いや、最善は、グラナディアだ」


「でも、入れ違いになったらまずいっす―」


「いや、それでもだ」


迷いはない。


イーリスは先にヴェルサニアへ飛び去って行った。


そしてアルベルトを、まず安全な場所へ。


「信じよう」


サイラスの言葉に、

フェリックスは頷く。


一行は、走り出した。


お互いが、それぞれが、同じ想いを抱えて。


アルベルト

「こんなの持ってるけど、使うかね?」

※キ◯ラの翼


「おいwダメだろそれwww」


「なぁに、空に投げるとピューじゃぞ!はっはっは!」






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