第49話 話し合い
メダイユにセーブルとナデラの使者がきた。
メダイユ王から、シシリーの第一王子の身柄を渡して欲しいと、手紙が来たからだ。
セーブルは、神官一人、ナデラはカタリナ様と護衛らしき人。
神官は冬の神ハーベイの神官らしく、白の神官服をきた青い髪の男性。
カタリナは、クリスより明るい金髪に若葉色の瞳のいかにも才女な感じ。
護衛は、黒に近い茶色の髪に黒い瞳の男性だが、シリウスを一目見ると、上から下まで舐めるような目に変わった。
シリウスの隣りのソルと神官、カタリナが冷たい目で見ているが気づいていないらしい。
「今回、私の兄を引き受けてくださると聞きました」
カタリナは、シリウスに言った。落ち着いた口調で、静かに頭を下げる。
「ありがとうございます」
「セーブルとしては、多少思うところもありますが、ノースウッド公爵は奥様のためにということで間違いございませんか?」
「はい。幸いなことにスフェーン王子に悪い噂はございませんし、妻がどうしてもと言うので」
「そうですか…」
「ですが、王族を一人見逃していただくのですから、こちらも何か差し出したほうがいいですよね」
シリウスは、使者に言う。
ただで、何かしてもらうのは良くない。後で何かあった時に、今回の事を持ち出されたら困る。
「何をしていただけるのでしょうか?」
「そうですね。例えば、竜の角や爪、エリクサーなら渡せますよ。私は魔法使いですから。それでも足りなければ、シシリーにいる王族や邪魔な貴族を一カ所に集めていただければ、必ず、殺して差し上げます」
にこりと笑って、シリウスは平然と話した。
「そうすれば、セーブルもナデラも無駄に兵を失うことはないですよね?」
カタリナも使者も目を見開いた。
「公開処刑にこだわらないのなら、それが最善と思いますよ」
「自ら手を汚すことを厭わないと、そう、おっしゃるの?」
カタリナは、震えた。
シリウス・メレ・ノースウッド公爵は、綺麗な顔で有名だった。
魔法使いとしても優れているとのことだったが、ほとんどの人は、親の七光りかその美しい顔でまわりを籠絡したのだろうと考えていた。
でも、目の前の麗人は、当たり前のように自分の手を汚す話をする。
「えぇ…構いません。それが最善であるなら」
セーブルの使者もぞわりとした。
これが、王族なのか。
噂では、過保護なまでに大切にされてきた、花のような方だと聞いた。
実際、目の前に現れた時、息をするのを忘れた。さらりとなびく薄茶色の髪に、宝石のような青の瞳、華奢な身体にスラリと伸びた手足。
声さえ美しい。
この顔でこの声で、何か強請られたら何でも揃えてやりたくなるだろう。
でも、この方はそんなことは言わない。
「本当に、やれるのなら…私はセーブルにこの話を持ち帰ります」
「やりますよ。それが最善で最短と信じます。セーブルとナデラは無傷のシシリーを手に入れられる」
いい話でしょう?
誰も困らない。
セーブルとナデラは、場を整えればそれですむし、シリウスは妻の願いを叶えてやれる。
カタリナも兄を助けられていいことしかない。
「私は、その条件で構いません」
カタリナと使者は、自然と頷いていた。
シシリーと戦争をして、無駄に命を使い捨てるより、簡単な方法ですむなら、その方がいいと主も言うだろう。
使者達は、転移魔法で帰っていった。
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