第13話「二つ目の遺物と英雄の真実」

 レイルとの絆を再確認したカイルは、新たな決意を胸に二つ目の遺物があるという「忘却の遺跡」へと向かった。


 レイルは城から動けないため、今回もカイル一人の旅だ。しかし、胸のペンダントから伝わる彼の魔力が、常に共にあることを教えてくれていた。


「忘却の遺跡」は、砂漠の只中に存在する古代の建造物だった。その名の通り、内部は侵入者の記憶を曖昧にさせる特殊な魔力が満ちており、一度入れば二度と出られないと恐れられている。


 カイルは入り口で一瞬躊躇したが、レイルの顔を思い浮かべ、意を決して足を踏み入れた。


 遺跡の中は、まるで巨大な迷路のようだった。進むほどに、頭に靄がかかったように思考が鈍っていく。


(あれ……俺は、なんのためにここに……?)


 危うく目的を見失いそうになった時、胸のペンダントが温かい光を放った。レイルの魔力が、遺跡の呪いからカイルの意識を守ってくれたのだ。


「そうだ、レイルさんを救うために……!」


 意識を取り戻したカイルは、慎重に遺跡の奥へと進んでいく。


 遺跡の最深部らしき広間にたどり着くと、そこには一つの石碑が置かれていた。壁には、古代の文字でびっしりと何かが刻まれている。


 カイルが石碑に触れると、『呪物鑑定』スキルとは違う、不思議な力が働き、壁の文字が頭の中に直接流れ込んできた。


 それは、この遺跡を築いた古代の英雄、アルトリウスが遺した記録だった。


『これを読む者がいるのなら、それは我が友、レイルの呪いを解こうとする者だろう。まず、我が犯した過ちを伝えなければならない』


 記録は、衝撃的な内容から始まっていた。


『レイルの暴走は、自然に起きたものではない。原因は、我にあった。我は当時、強すぎるレイルの力を恐れる王国の声に耳を貸し、彼の力を弱めるための古代魔法を密かに研究してしまった。だが、その魔法は不完全で、結果的に彼の魔力を暴走させる引き金となってしまったのだ』


 カイルは息をのんだ。レイルの暴走は、親友であった英雄の裏切りが原因だったのだ。


『私は、愛する友を裏切り、苦しみの底へ突き落とした。彼を「悲しみの呪縛」で封印したのは、暴走を止めるためだけではない。いつか、彼の呪いが解かれる時、我が罪もまた白日の下に晒されるようにするためだ。私は英雄などではない。ただの、友を裏切った愚か者だ』


 壁の記録は、英雄の深い後悔と懺悔の言葉で埋め尽くされていた。


 そして、最後はこう締めくくられていた。


『もし、これを読んでいる者が、レイルの孤独を心から理解し、彼の傷を癒そうと願う「真の理解者」であるならば、どうか、我が友を救ってほしい。彼に、永い夜の終わりと、温かい光を……。二つ目の遺物は、その資格を持つ者の前にのみ、姿を現すだろう』


 英雄の悲痛な願いが、時を超えてカイルの胸に突き刺さる。


 レイルが背負わされてきた苦しみは、カイルが想像していたよりも、ずっと重く、理不尽なものだったのだ。


「……絶対に、救ってみせる」


 カイルは壁に向かって、そして天にいるであろう英雄に向かって、力強く誓った。

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