年上の夫から「理想の妻」であることを強要される主人公・一葉。
外へ働きに出ることは許されず、家事も妊活も、すべて夫・義春の支配下に。
彼女が置かれた環境は閉塞感に満ちています。
彼女は息苦しいまでの負の感情を抱えていますが、その淀みない筆致に、気づけば最後まで読み進めていました。
「温めるのはお前の仕事じゃないか」
義春のこの言葉の真の意味がわかるとき、物語は一気に加速します。
正常な判断を許さない限界点。
すべてが爆発する場面で感じたのは、絶望でありながら、爽快さでもありました。
「温もり」が降り注ぐラストシーンと、そのあとに待つもの――
読後もしばらくは戦慄が止まらない傑作です。
怖い! 怖い! 救いがない!
冒頭からものすごい閉塞感で、「これ、絶対にこの後に怖いこと起こるやつ!」と確信しながら読み進めることになります。
夫の義春は高圧的で、とにかく自分を「子供を産ませるための道具」くらいにしか見ていないのではないかという感じが濃厚に伝わって来る。
心の中は嫌悪感でいっぱい。もともと好きで結婚した相手でもない。女性にちゃんと「人格」があるかどうかも考えていなさそうな男でもある。
こういう相手だから、いずれはきっと……なんて予想を付けながら読みましたが、結末はそれを凌駕するものとなっていました。
とあるツイスト。そこからのツイスト。閉塞感の更に更に上を行く、圧倒的な絶望感。そこから迎える終焉という、すごく深い深い地の底をイメージさせられました。
ブラックを更に凌駕する、より濃厚なブラック具合。強烈過ぎる苦みが味わえる作品です。