そして「現実」を知る

「……創造神、様?」


 実のところ、創造神は最重要キャラのくせして、ゲーム上で直接登場することはなかった。

 破壊神の力が強く創造神の力が弱っているという設定のせいかなと思っていたのだけれども、結局ストーリーが終わっても姿を現すことはなく、セリフだけの神託オラクルやアイテム、村人の話や書物などでしか存在していなかったのだ。

 そんな神様が唐突に目の前に現れてみればびっくりするのも仕方ないよね?

 しかも、なんかこう、オーラがすごい。高貴さが溢れ、思わず跪きたくなってくる感じ。


「はい、そうですよ。わたくしの神子、リオン」

「!?」


 お、応答した?

 一方的に神託を授けられるだけじゃなく、会話もできるの?


「どうかしましたか?」

「えっと、その……創造神様と会話できるってことに、緊張して」


 まるっきり嘘ではないけれども、さすがに「会話ができるなんて、このゲームは会話AIを載せるようになったんだ」などと面と向かって言えるわけがない。村人は時間帯や好感度によってセリフが変化することがあったけど、決められたセリフしか言ってこなかったのだ。

 更に、ただ会話ができるというわけではない。声になんらかの効果かみさまパワーが乗っているのか、体がビリビリとしてくる。決して不快ではないけれども、少しだけ息苦しさを感じる気がする。


「あぁ……こちらに来ていただくにあたりあなたの体を作り変えた影響で位階が下がっているのでしたね。申し訳ありません、あなたの所持していたスキルまで再現する力は今の私にはないのです」


 むしろスキルの引き継ぎはなくて当然と思っていたのでわたしは全く気にしていない。……またMAXまで上げるのに苦行が必要なのかと考えると遠い目をしたくなってくるけど。

 この息苦しさはコンバートでスキルがリセットされた=神子として新米に戻ったので、神様パワーに圧倒されちゃったとか、そういうこと、かな?


「神子リオン、改めてお礼を申し上げます。異なる世界に届けるには私の力が足りなかったために、最低限の神託しか送れなかったのですが……よくぞ決断してくれました」

「いえ、とんでもない! わたしも新ワールドには興味がありましたし!」

「……そう、なのですか? 故郷に二度と帰れないというのに……随分と前向きに考えてくださったのですね」


 偉い神様とか以前に、美人に頭を下げられるとなんかドキドキするね! その後のキョトンとした顔のギャップがまた……とかいう感想を抱いていると、なんか危ない人みたいだなぁ。

 そんなわたしの心中など察するわけもなく(察せられても困る)、創造神は憂い顔をわたしに向けてきた。


「日が落ちるまで時間もないので手短に説明いたします。また、今回の降臨は無理を押しているので、次にあなたと交信できるのはかなり後……少なくとも月が一巡りはした後だと思ってください」


 ……やっぱり一番最初に創造神の像を作っておくべきだったかー。

 普通に考えて、創造神の力が弱りに弱っている序盤に、その上破壊神の時間になる直前とか一番アカン感じですよね……。


「あなたに助けを求めた理由は一つ、この世界――アステリアを救ってほしいということです。今アステリアは破壊の力に侵され、滅亡の危機に陥ろうとしています」

「その破壊の力の侵食率はいかほどです?」

「……九割以上……あなたが降り立ったこの小さな地域を除いた全て、です」


 ほーん。前作と同じですね?

 今わたしが居る場所は大陸南部の一部の地域、サイズ的にはそんなに大きくないとのことで、ここ以外全部がすでに破壊神の支配領域というのは確かに危機的状況だろう。

 ちなみに、破壊神の領域であっても住もうと思えば住める。日光が弱くて作物や動物の育ちが悪かったり、モンスターが強かったり、アイテム作成に制限がかかったりするけど。

 住人もすでに諦めてかつかつな状態でかろうじて生きてるタイプもあれば、なんとか砦を作り一致団結してモンスターに抵抗しているタイプもある。


「この地を足掛かりに、創造の力を揮い満たしてください。各地を巡り、住人に手を差し伸べてあげてください。力を奪われ封じられてしまった各神の解放をしてください」


 ……ひょっとして、このゲームは完全新作じゃなく前作を最新技術でリメイクしただけ?ってくらいに同じだなぁ。


「システムは『ワールドメーカー』と同じなんですか?」

「……そうですね、全て同じとは言えませんが、あれはこの世界を土台にして作られたものですし、あちらでできることは大体こちらでもできると思ってください。むしろ制限が消えた分できることはかなり増えたはずです」


 は? この世界をベースに? 元々企画はこちらが先だったってこと? どゆこと?

 疑問をぶつけようにも、口を挟む隙が与えられる間もなく創造神との会話が終わりを迎えようとしていた。


「最後に。……私は、あなただから助けを求めたのです。少なくとも現時点において、十分な力を持ち、私の望むアイテムを作り上げたのはあなただけでした」

「へっ?」


 メイキングマスターの称号を獲得したのってわたしだけ? いやいやそんなことあるはずがない。


「きっとあなたなら、破壊神を――――」

「待って、そこで消えちゃうの? 創造神様、めっちゃ中途半端ですね!?」


 こうして、数多くの疑問を残したまま、わたしと創造神のファーストコンタクトは終了したのであった。




「うーん……まぁ、序盤に意味深な伏線がばらまかれるのってよくあることだよね」


 少しずつ空が闇に覆われはじめ、本格的に破壊神の時間が訪れる前にわたしは拠点の中へと引きこもった。

 晩御飯としてお昼に作り置きしておいた魚をモグモグとしながら創造神との会話内容を思い返す。


「完全新作ってわけじゃなさそうなのは残念だけど、このクオリティなら十分以上に楽しめそうだからいいか」


 まだ夜になったばかりだけど外に出るわけもいかないし、燃料に乏しく作業ができないので大人しく寝ることにしよう。

 寝室に向かい、草藁のベッドへと潜り込む。想像通りのチクチク加減だ。


「ふわぁ……眠気まで再現されてるのか……いや、わたしの本体が眠気を感じているのかな? 今日のところはログアウトするか……」


 そうしてステータスを開き、システムを選択しようと――


「……あれ?」




 ない。


 ログアウトメニューが。




「…………え?」


 何度目をこらして見てみても、ログアウトどころか難易度変更とか音量調整とかのシステムメニューも存在しない。

 配置が変わったのだろうかと左上から右下までゆっくり確認してみるも、見つからない。違うメニューに紛れてないか色んなところをタップしてみるも、見つからない。


「……まさか……?」


 創造神からのメッセージにあった。さっきも言っていた。


『元の世界に戻ることはできません』

『故郷に二度と帰れないというのに』


 わたしはそれを『元のゲームにデータを戻せない』と思いこんでいたけど、そんなことは一言も書かれてなかった。

 でも『異なる世界』とはしっかりと書かれていた。

 つまり。




「…………本物の……異世界……?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る