創造神の神託

「SPも回復したことだし、今度こそ建築だ!」


 そう言いながらわたしはドンドンッと木をブロック状のまま積み上げていく。木の丸太を使用したログハウスなどではなく、木のブロックそのまま。

 木の板などに加工することだってもちろんできるのだけれども、素材自体大して強度もない、強化もできない現状ではブロック状のものが厚さがあって地味に一番防御力が高いのだ。

 建築スキルレベルが上がると建造物に強化が掛かるという大きなメリットがあるのでこれもとっとと上げておきたい。他は特殊効果がある建築系アイテムレシピのアンロックとかもあったりするね。


 とりあえずスキルレベルも一だし最初の拠点なのでデザイン性とか抜きに四角く壁を作る。いわゆる豆腐ハウスだ。


「後からいくらでも拡張できるから、最低限としてキッチン兼食堂の一部屋、作業用の一部屋。寝室兼物置の一部屋を作成するのが鉄板かな」


 四角の箱の中に区切りとして板を設置して、部屋として分けていく。

 地面を掘って一段低くして、木ブロックを埋めて床にする。ガラスもそのうち欲しいなぁと思いながら窓枠だけ作っておいて木の板をはめる。出入口に木の扉もはめる。天井を作る。

 なお、天井であるけれども、柱など長いものを渡す必要はない。ブロックを横に持っていくだけでくっ付く便利仕様である。ここも変わってなくて良かった。


「トイレを忘れるところだった……ちょっと壁を移動させて広くして、っと」


 創造神パワーで壺を置いてそこに用をたすだけで肥料ができるんだよね……採取するのに忌避感があるので、その辺りはさっさと魔石を手に入れて自動化させたい。


 魔石とはその名が示す通りに魔力を帯びた石だ。主な入手方法は拾うかモンスターを倒すかのどちらかである。前者の方法では初期地点ではあまり手に入らないし、後者は破壊神の力が強い地域や各地に点在するダンジョンに足を踏み入れる、もしくは夜にならないと出現しない。

 日の出ている間を創造神の時間、日の落ちている時間を破壊神の時間と呼び、破壊神の時間になるとモンスターがわらわらと湧いて出てくるので注意が必要だ。装備が揃ってからは素材のためにあえて起きたままでモンスターを狩っていた時もあったけれども。

 魔石の魔力を使用してもMPを消費することで補充ができる。でも壊れることもあるので、基本的に消耗品扱いだ。


「ふぅ……次は室内を整えるか」


 キッチン兼食堂……落ち着くまで外で料理して床に座って食べればいいや。後回し。

 作業部屋はとりあえず作業台と簡易炉を設置。他は時間が掛かるので後で。

 作業台は鍛冶用の溶鉱炉や錬金用の大釜など特定の設備を必要としないアイテムの作成に使用するもので、ごくごく簡単なもの以外のアイテム作成にはほとんどこれが必要になってくる。そしてスキルレベルの合計が一定値を超えると作業台のランクが上がり、レシピがアンロックされる。

 寝室兼物置には早速作業台を利用して作成した木のベッドを置く。ここで寝るとLPとMPが回復するからとても大切。ただ布団はそこらで拾った草藁である。見るからにチクチクしそうなので早く綿が欲しい……。

 設置型アイテムボックスである収納箱を作成するのも重要だ。アイテムボックスは一枠で九九九個まで持てるとはいえ、しょせん十と百の枠しかない。それだけで全てのアイテムを所持できるほどこのゲームのアイテム数は少なくない。インナーボックスというアイテムボックスの中に入れられるアイテム収納箱があり、取り出すのに一手間掛かるようになるけど単純に持てるアイテムの枠数が増えて中盤以降では重宝する代物もあるけれど、それでも足りないくらいにアイテムの種類がある。まぁポーションとか聖水とかよく使うものは一枠以上ストックしていることもあるしね。当然ながらインナーボックスの中にインナーボックスは入れることは出来ず、無限収納は不可能だ。

 よって、外出中に自由に取り出すことはできないけれど、他にアイテム保管枠を用意しておくことは重要なのだ。これは三十枠しか容量がないので、プレイヤーなら誰しも大量に設置することとなる。


「ヤバ、もうこんな時間だ。先に作っておくべきだったかなぁ」


 窓枠から顔を出して空を見上げてみれば、太陽が頂点から四十五度くらい移動していた。ざっくり午後三時くらいの計算になる。

 きちんとした装備がない序盤で夜を対策なしに過ごすのは自殺行為に近い。だからわたしは、夜を越えるための最重要設備をこれから急いで用意しなければならない。


「木……いや、石にしておこう。細工スキルレベル上がってるから作れるはず」


 作業台の上に石ブロックを二つ、デンと出現させる。

 わたしがこれから作るのは……創造神の像だ。


 この世界には神様が実在する。火の神、水の神など何柱か存在しているけれども、最も重要なのはもちろん創造神。

 そして、神子であるわたしたちプレイヤーが創造神を始め、神様を模した像に向かって祈りを捧げると様々な特典かごを得ることができる。何も起こらないことの方が多いけれども。


 創造神の像に祈ることで得られる特典で重要なものは三つ。他の神だと変わってくるけど、それはまた別の機会に。

 一つ目は神託オラクルとして次の行動指針を示されること。自由度の高いゲームだから必ずしも従う必要はないけれども、神託スキル経験値がもらえるので基本的には従った方が良い。スキルレベルが上がると祈らなくてもたまに神託が降りてくる。

 二つ目は新たにスキルを得られること。聖属性付与とかエンチャント系は結構重要だ。

 三つ目、これが序盤どころか終盤までずっと必須な機能、聖域展開アイテムの作成だ。


 先に言及した通り、夜は破壊神の時間であり無策だとモンスターに襲われてしまう。そうなっては安心して眠ることができない。

 そこで聖域展開アイテムを使用して拠点を聖域化することでモンスターの侵入を防ぐのである。ダンジョンの中での休憩もできるようになるので常に所持しておきたい。

 ちなみに、もっとも楽なレシピが水だけでできる聖水だ。だから真っ先に川を探したというわけ。

 まぁどれもこれも前作の知識だけど……今までほぼ変更がなかったのだし、この仕様も同じだと思って作っておくしかない。用意しないで泣くはめにはなりたくないのだ。


「……作成メイキング、【創造神の石像】」


 創造神の像にもランクがあったりする。最低が木で、それより一つ上が石だ。素材がグレードアップするごとに特典もグレードアップしていく。死活問題なので、現在作れる最高のものを作らなければいけない。……いや下から二番目なんですけどね?


 スキル発動とともに石ブロックが光に包まれ、まるで粘土細工のようにぐにゃぐにゃと形を変えていく。

 十秒ほどした後に光が収まると、そこには優しそうな表情をたたえた美しい女性……創造神の石像ができあがっていた。

 高さは八十センチほどだからスケールは二分の一くらい? いや神様だからもっとビッグかもしれないけれどもね。

 おっとりとした目付き、ゆるくウェーブのかかった腰まで届く髪、古代ギリシャ風のキトンを身に着けたその全身はどことなく気品をたたえ、そして一部が非常に主張してたりしてて……色んな意味でファンが多かったりするのよね、創造神様。わたしも好きだけどさ。


「安置する祭壇も作らなきゃ。忙しい忙しい」


 日の出ている時間を創造神の時間と称するだけあって、創造神の像は屋外に設置して日に当てないといけないという決まりがある。なお、曇りや雨でも条件は満たされる。

 祭壇を作ることで微妙に効果があがるのだけれど、それには建築スキルと神託スキル両方を上げなければいけない。


 地面を掘り返して石ブロックを埋め、石畳のようにする。周囲に一定間隔で石柱を作る。花壇を作り、拾っておいた花の種を植える。

 最後に、中央を一段高くして、そこに創造神の石像をそっと置いた。


「ふぅ、これでよし……忘れる前に聖水も作成して、と」


 聖水を作り終えた後、他に必須作業はなかったかな……と指折りタスク確認をする。うん、初日にやるべき作業は終わった。


「じゃあ創造神様にお祈りあいさつしようかな」


 ……この世界に来てから真っ先にやるべきことだったかもしれないけれども。

 お祈りの作法は特にない。わたしは神社のお参りチックにパンパンと二回柏手を打ってから目をつむった。


「創造神様、これからよろしくお願いします。どうかわたしを見守っていてください」


 口に出したその時、まぶたを閉じていてもわかる程度の強さの光が発生した。

 びっくりして目を開けると、創造神の石像が光を放っており、空へと光の柱を伸ばしていた。


「ひょっとして神託が届く前兆エフェクト?」


 前作では軽く光って短いセリフが流れて終わり、もしくはシステムメッセージとして届けられていたので、初めて体験する現象にポカンとマヌケ顔をしながら上へと視線を向けていったら、光の塊がフワフワと降りてきているところだった。

 それは石像より少し高い位置で止まったかと思えば、今度は少しずつ形を変えてゆく。


 何度も見た覚えのある、むしろついさっき見たばかりの、優しそうな女性へと。


「……創造神、様?」


 わたしは、現れた女性とさっきまで祈りを捧げていた石像を見比べ、そうポツリと呟いた。

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