第2話 雛谷小糸 1回目 その2

雛谷ひなたに 小糸こいと

 幼稚園の頃から一緒の幼馴染み。家が近所で小学生くらいまではよく遊んでいたな。

 思春期に入ってからは段々と距離を置くようになり、学園の卒業間近に彼氏ができたって聞いて、密かに寂しい思いをしたもんだ。


「ん~? どうしたのゴー君」

 幼さの残る舌っ足らずな喋り方もあの頃のままだ。

 改めて彼女の姿をマジマジと見てみる。


 小さな背丈、身長は178㎝の俺よりかなり低くて150前後か。

 頭も顔も小っちゃくて肩も華奢。胸の大きさはあまり育っておらず、それでも女の子らしい膨らみはしっかりと確認できる。


 サラサラとして手触りの良さそうな茶色掛かった髪をポニーテールに結び、根元には小さなリボンが結わえ付けられている。


「あれ、そのリボンもしかして」

「あ、気が付いた? むかし一緒にお祭り行ったときにゴー君が買ってくれた奴だよ-」


 幼馴染みだから一緒に過ごす時間が長かった俺達。

 親に小遣いをもらって出かけた縁日の出店で、小さなヘアアクセを送った記憶が蘇ってくる。


 あの頃は純粋に隣にいてくれるコイツの事が大好きで、その感情を隠すことなく接していた気がする。

 今の小糸は、あの頃の遠慮の無い無邪気さがかなり残っているように思える。


 そうか、俺のイメージする一番輝いていた頃の彼女だから、一番美しい思い出が詰まった頃の性格が反映されているのかも。


「やっぱり可愛いな、小糸は」

「ふぇっ⁉ そ、そうかな。ありがとう……そんなふうに褒めてくれるのって初めてだよね。最近はあんまり喋ってくれなくなったから、ちょっと寂しかったんだよ」


 そうか、この頃の小糸とは思春期特有のヘンテコなプライドが邪魔して、どうやって接していいか分からなくなっていた。


 段々と疎遠になっていた頃の自分を殴ってやりたい気分だぜ。

 そのせいでアイツに彼氏が出来たことも人伝に聞くまで知らなかったんだ。


 制服の紺色ブレザーとチェック柄のミニスカートから覗く生足が眩しい。


 真面目な彼女らしくハイソックスを学園の規定通りに着用している姿がとても愛らしかった。

 しかし、その腕に通された小さなバッグの中にはお店御用達のエチケットアイテムやタオル、小さなボトル類が入っている。

 それが彼女をお店のキャストたらしめていると考えると、心が高鳴ってきた。


「小糸ッ」

「きゃっ♡ ご、ごー君。まだシャワー浴びてないよ」

 思わず愛おしくなって抱きしめてしまったが、小糸は小さく悲鳴を上げるのみで抵抗しなかった。


「えへへ、ごめんね。興奮してくれるのは嬉しいんだけど、まだお店に慣れてなくてどうしたらいいか分かんないや。まずはマニュアル通りにやらせてもらっていい?」

「あ、ああ、そうだな。悪い。俺も嬉しくてさ」


 どうやら記憶は学園に通っていた当時の状態になっているらしい。

 ただし、間違いなくお店勤めなんてしてなかっただろうから、彼女が当時と同じ小糸でない事は確かだ。

 だが抱きしめた体温は本物の人間そのもの。

 人形なんかじゃ絶対にないし、他人のそら似が演技しているとも思えない。

 

 仮にも長年一緒に過ごしてきた女の子の雰囲気を間違える筈もなかった。

 とはいえ、本物の小糸には成人式の同窓会以降15年近く会っていない。

 今どこでどうしているのかも知らないから、あまりエラそうな事はいえないのが事実だ。


「でもよ、一つだけワガママ言っていいか?」

「ん、なぁに?」

「キスだけ、キスだけ最初にさせてくれ。あとはマニュアル通りでいいから」

「え~、えへへ。しょーがないなぁ。ごー君だけ特別だからね。普通はシャワーと歯磨き前のキスはNGなんだから」


 そういって頬を赤らめた小糸が静かに目を閉じる。

 小さな唇。俺が大好きだった小糸が目を閉じて上向いて、キスを待っている。

 

 興奮しない筈がないっ!

「んむっ……はぁ……ごー君、いきなり激しいよぉ……」

 ポニテの付け根を抱えて頭を押さえ込み、唇を重ねる。

 一瞬驚いた小糸だったが、抵抗せずに受け入れ、むしろ応じてくる。


「ん……ごー君、情熱的だよぉ……はぁ♡」

 小糸はマニュアル通りと言いつつも、抵抗なく応じて顔を嬉しそうに緩めている。


「んんぁ……ご、ごー君の、凄く大きくなってるね。やっぱりシャワー浴びよ。これ以上は私も我慢できなくなりそう」


 俺としてはそのまま恋人みたいにイチャイチャでも構わない気がしたが、まずはこの不可思議な状況を理解するためにも従っておいた方が得策な気がして身を引いた。


 あまり無理に欲望を優先させると何かしらのトラブルが発生するかもしれない。

 そうなったらせっかくの夢のようなシチュエーションが台無しだ。

 ここは慎重になるべきだろう。


「ああ、悪かった」

「ううん。求めてくれて凄く嬉しかった。私もお店じゃなかったらこのままで全然よかったくらい」

 

 お店だから、か。やっぱりこいつは小糸の性格でありつつも小糸本人ではない気がする。

 だがまあ今は細かい事を考えても意味はない。

 

 促されるままに風呂場へと案内し、お互いに衣服を脱いでいく。

「まて小糸。服、俺が脱がせていいか」

「え、う、うん。リードしてくれるんだ。助かるよ。ちょっと緊張しちゃって」

「そういうもんか? そういえばお店に慣れてないって言ってたな」

「う、うん。実はね、私、今日が初めての出勤で、最初のお客さんがごー君なんだ」


「え、じゃあ俺が初客ってこと?」

「う、うん。だから正直すごく助かってる。知らない男の人の前で裸になるって、やっぱり抵抗があって。仕事だから仕方ないって分かってるんだけど」


 こいつはラッキーだ。この反応の仕方から全然男慣れしている感じがしない。

 ひょっとすると彼氏ができる以前の時間軸からやってきた小糸か?


 そうだとしたら……。

 これは特別な時間を楽しもう。

 正直な所、お店は体は満足しても心が渇いてしまう。

 それを自覚すると途端に冷静になっちゃう時があるんだよなぁ。


 そりゃ金で時間とサービスを提供してもらうわけだし、お互いに心が伴わないのは当たり前中の当たり前なのだが、それが分かっていても呼んでしまう男の悲しさよ。


「えへへ……なんか恥ずかしいね。お互い知り合いだと余計意識しちゃう。やっぱりごー君が相手だからかな?」


 衣服に手を掛けた小糸がハニカミながら上目遣いに見つめてくる。

 なんだか本当に恋人にそうするみたいな距離感がこそばゆい。

 だがそこに妙な快感が生じてしまっているのも事実だ。


「じゃあ脱がすぞ」

「う、うん……恋人コースにする? イチャイチャしよっか」

「ああ。せっかくお互い素肌を重ねるんだからトコトン楽しくしないとな」

「やっぱりごー君優しい。凄く怖かったから、安心する」


 目の前にいるのは本物の小糸ではない。だが限り無く当時の小糸に近い存在だ。

 

 だとしたら、もう好き放題隠しごとなしにした方が楽しくなるんじゃないだろうか。

 どうせ金で買った時間だ。それが終わればこいつはここからいなくなってしまう存在なのだから。


 だってどう考えたって過去からやってきた小糸そのもので、本物の筈がない。

 といいつつも、心のどこかで本物の小糸がタイムスリップしてやってきたかもしれないという予想が頭に張り付いている。


「この制服を脱がすの夢だったんだ」

「んっ……は、恥ずかしいな」


 ブレザーを脱がせ、ブラウスのボタンを外していく。

 触れた指先に感じる体温と、華奢な肉付きがリアルを感じさせる。


 こいつの体ってこんなに小さかったんだな。成長期途上の時期だからか余計にそう感じる。

 スカートのホックを外し、布地が落ちる。

 下着姿になった小糸に興奮を覚えつつ、残りを脱がせていく。


「可愛い下着だな」

 子供っぽい体型とのギャップが心をくすぐる。

「は、恥ずかしい……」

「じゃあキスしながら脱がせばごまかせるだろ」

「ふみゅあ⁉ んみゅっ……ふわぁ、キスで、気持ち良くなってきちゃった」


「それが良いんじゃないか。あとで着衣のままでもいいよ」

「ん、分かった。ふぇ……へへへ、なんかごー君の前で裸になるのって初めてじゃないのに、変な感じだね」


「子供の頃じゃないか。一緒にお風呂入ったよな」

「うん。でも、ごー君大人の男の人になってる。あの頃よりずっとガチガチしててゴツゴツしてて、なんかドキドキする」


 こいつの目には今の俺は今の俺として映っているらしい。

「今度は小糸が脱がせてくれ。まあシャツとスウェットだけだけど」

「う、うん。んっしょ……あれ、届かないや。少し屈んでもらっていい?」


「ああ」

「うわぁ、腹筋すごい……。男の人って感じだぁ……」


 スウェットを押し上げる部分を撫でながら頬を赤らめる小糸が愛おしい。


「ほら、下も脱がせてくれ」

 キャストの女の子にズボンを脱がせてもらう瞬間が結構好きだ。

 支配欲が満たされるというか、見下ろす感じがたまらない。


「ふわぁ……お、大きい……、す、凄いね」

「歴代の中で第何位くらいかな?」

「そ、そんなこと言われても、男の人の見るの、初めてだし。そういう経験、全然ないし……」


 ビンゴッ!! 経験浅いってことかっ。最高じゃないかっ。普通のお店には絶対いない新人キャスト。

 ただの新人なら面倒くさいだけだが、幼馴染みの小糸なら別だ。


「じゃあ大きいって何基準なん?」

「そ、そんなの、同人誌とか……エッチな、動画とか」

「へえ、小糸もそういうの見てるんだな」


「そ、そりゃ、そういうのに興味あるお年頃っていうか、普通だと思うけどっ!」

「そうだな。普通だと思うぞ。じっくり見てくれていいんだぞ」

「は、恥ずかしいからっ、早くシャワー浴びちゃおっ」


「そうだな。後でサービスしてもらうわけだし、いくらでも見れるしな」

「もうっ、ごー君デリカシーないよーっ」


 プリプリ怒る小糸だが、こういう時の彼女が全然怒ってない事はよく知っている。


 全ての衣服を脱がした小糸の姿が露わになり、改めて大人になった、しかしまだ未成熟な瑞々しさを備えた小糸の姿に感動する。


 肩は華奢で、華奢な体が愛らしい。


「んもう、ごー君のエッチ」

「だってエッチな事するんだもんよ」

 

「ドキドキするよー」

「滑らないように気を付けろよ」

「う、うん」

 

 シャワーの温度を調整し、足下から当ててやる。

 仕事に慣れていない小糸のために俺の方がリードしている形だ。


「なんか私がサービス受けてみるみたいだね。ごー君お店とか慣れっこなんだ」

「まあ大人だしな。それなりに経験はしてるさ」

「そっか。あ、シャワー当てるね。体はササッと洗っちゃおうか」


「ああ、頼むよ」

 幼馴染みの小さくて柔らかい手が胸板に這ってくる光景に、心がさらに高鳴る。


「うわっ、ビクンってなってる。さ、触ってみるね」

「ああ、丁寧に洗ってくれよな」

「う、うん……」


 柔らかくて優しいタッチ、というよりおっかなびっくりに触れる初々しい手つきが堪らない。

 普通のお店のキャストってのは当然ながら男慣れしている人がほとんどなので非常に事務的に洗浄を行なってくれる。


 中には楽しくお喋りを交えながら自然に洗い終えているプロもいるが。

 その初々しさを味わいたくて、新人には人気が集中するものだ。


 特に業界初めての嬢を初客で指名できた時には得も知れぬ感動と興奮を味わえる。

 それが幼馴染みの女の子で味わえるのだ。興奮はかつて無いほど強かった。


「優しく擦ってくれな。優しくだぞ」

「う、うん。こうして、こうだよね」


 ぞわっとした快感が体を駆け巡る。

 これはたまらんな。全盛期の同級生に体を洗ってもらうのがこんなに心温まるなんて。


 体の感覚としてはそれほどでもないが、背徳的な興奮とほっこりした気持ちの融合である。


「下の部分も丁寧に洗ってマッサージして」

「んっしょ、んっしょ」

「そうそう。あんまり強く握らなくていいぞ」

「う、うん。なんだか変な感触だね。凄く硬いのになんだかブニブニしてる。なんだか可愛いかも」


「それは男には褒め言葉にならないぞ」

「そ、そうなんだ。ごめん」

「よし、全体を満遍なく洗ったら洗い流してな」


 そんな感じで、サービスを受けるというより俺が小糸の接客研修をしているような感じでシャワータイムは終了した。


「じゃ、じゃあもう一回制服着ればいいかな」

「そうだな。頼む」

「う、うん。……えへへ、なんだか照れくさいね」

 まるで恋人のような時間だ。小糸自身がまったくスレてないから、お店であることを忘れそうになる。

 

 さて、制服を着用したらプレイスタートだ。これは楽しみだぞ。

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