世界支配の真理:ルーンの保持者と選ばれし少女たち

Juyou

第一回:『嵐の夜の再會と、解析の鼓動』

孤独な逃亡者

土砂降りの雨が、ソリス大陸の辺境にある街道を叩きつけていた。


「……ツイてないな」


少年、エライは濡れたフードを深く被り、一人で歩いていた。その懐には、大魔導師マーリンから託された一冊の古書——『始まりのルーン』が重く収まっている。 マーリンが死んでから数ヶ月。エライは誰にも頼らず、ただこの本に記された「世界の真理」を解き明かすために旅を続けていた。


目の前に見えてきたのは、古びた一軒の酒場『野兎の足亭』。 エライは逃げ込むようにそのドアを押し開けた。


招かれざる客

酒場の中は、雨宿りをする旅人や地元の荒くれ者たちで熱気に満ちていた。 エライが隅の席で温かいスープを啜り、一息ついたその時だった。


ドォン!!


蹴破られるようにドアが開き、冷たい雨風と共に「それ」が入り込んできた。 漆黒の鎧に身を包み、異形の角を持つ三人組——妖魔帝国が放った追手だ。


「……見つけたぞ、ルーンの保持者。大人しく来てもらおうか」


酒場の中は一瞬で静まり返り、人々は悲鳴を上げて逃げ惑う。エライは古書を強く握りしめた。まだルーンは完全には目覚めていない。一人でこの数の妖魔を相手にするのは分が悪すぎる。


「ちっ、もう嗅ぎつけられたか……」


エライが覚悟を決めたその時、カウンターの奥から一本の矢が風を切って飛来し、先頭の妖魔の足を正確に射抜いた。


青梅竹馬との共鳴

「ちょっと、そこの黒ずくめ! 私の行きつけで暴れないでくれる?」


凛とした声と共に立ち上がったのは、背中に大きな長弓を背負った少女だった。 快活に跳ねるポニーテール、そして勝気な瞳。エライはその姿に見覚えがあった。


「……リコ? なんでお前がこんなところに」 「エライ!? あんたこそ、何そのボロボロな格好! 故郷を出てから一度も連絡よこさないと思ったら!」


幼馴染の再會を喜ぶ暇もなく、怒り狂った妖魔たちが武器を構える。


「あーもう、説教は後! エライ、あんた私の指示通りに動ける!? 昔の狩りみたいに!」 「……ふっ、お前の無茶振りに合わせるのは慣れてる。やってやるよ」


解析完了(チェックメイト)

エライが古書に手を置くと、その瞳が微かに黃金色に輝き始めた。


「リコ、左の奴は膝の関節が脆い。右の奴は魔力供給が心臓に集中してる。——僕が隙を作る!」


エライがテーブルの上のワインをぶち撒け、指先で小さな魔法を放つ。瞬間的に蒸発したアルコールが爆発的な煙幕となり、妖魔の視界を奪う。


「そこだ、リコ! 角度三十度、三連射!」 「了解っ! 逃がさないわよ!」


リコの放った三本の矢は、エライの解析通り、妖魔たちのわずかな防御の隙間を寸分違わず貫いた。


「グガァァァッ!?」


断魔の力を込めたリコの矢により、妖魔たちは黒い霧となって霧散していった。


旅の始まり

嵐が吹き荒れる中、静まり返った酒場に残された二人。


「……助かったよ、リコ。弓の腕、上がったな」 「当然でしょ。あんたを探して、ずっと腕を磨いてたんだから」


リコは少し照れくさそうに笑い、エライの手をぎゅっと握った。


「決まりね。あんたのその怪しい本、私が守ってあげる。……文句、ないわよね?」


エライは手の中に残る、かつて知っていた温もりを感じながら、小さく頷いた。 孤独だった旅は終わり、ここから世界を揺るがす物語が動き出す。

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