再会した同級生と90年代の話で盛り上がる(マコト一人称)
yito
8巻しか出ていないのに今でも記憶に残る『ママレード・ボーイ』
オレンジ色に染まり始めた商店街を歩く。夕食の買い出しだろうか、ビニール袋を提げた人々がそこそこの賑わいを見せている。
スーパーの自動ドアから出てきた一人の女性と、視線がぶつかった。
「……え、アユカワ、君?」
足を止める。相手の顔を凝視し、記憶を探る。
「カワサキ…… サクラ?」
「嘘、本物?全然変わってないね!」
「それはこちらの台詞だ。中学の卒業式以来か。…… 驚いたな、こんなところで会うなんて」
歩道の端に寄り、向き合う。
「もう二十何年も経ってるのに、不思議とすぐに分かっちゃうもんだね。中学の頃の思い出が一気に蘇ってきたよ」
「ああ。あの頃は、放課後によくアニメの話をしていたな」
視線をわずかに落とし、言葉を継ぐ。
「特にほら、俺たちがドハマりしていた『ママレード・ボーイ』。あの設定の衝撃は、今でも忘れられない」
「出た! 懐かしい! 突然親同士がパートナーを交換して同居しちゃうやつでしょ?」
「そう。子供心に『そんなことあるか!』ってツッコミを入れながら、結局次が気になって仕方なかった。あのオープニング曲も、今でも完璧に歌える気がする」
「『笑顔に会いたい』ね! マコト君、当時は遊の真似とかしてなかったっけ?」
「してない。…… 断じてしていない。それは別の誰かと記憶が混ざっているんじゃないか?」
「えー、絶対やってたって。鏡の前で髪型セットしたりしてさ」
「君の方こそ、光希に憧れてリボンを付けていただろう。あの独特な家庭環境に自分を投影して、変な溜息をついていたじゃないか」
「ちょっと、それは言わない約束! でも本当、あの二人が幸せになれて良かったよね」
サクラの口元が緩む。彼女は人差し指を立ててこちらを見た。
「でも、その後の話もすごいんだよ。知ってる? 『ママレード・ボーイ little』」
「…… リトル? 何だそれは。光希と遊に、まだ何か波乱があったのか?」
「ううん、続編だよ。二人の弟と妹が主人公なの。光希たちも大人になって登場するし」
「続編……? 弟と妹……? 待て、あの複雑な家庭環境のさらに次世代を描いているのか?」
眉間にシワが寄るのが自分でも分かった。
「そうだよ。立夏ちゃんと朔くん。二人は血が繋がってない姉弟として育つんだけど、またこれが複雑で……」
「…… 知らない。そんな作品が存在すること自体、今の今まで知らなかった……」
「あはは! マコト君、顔がマジすぎるよ。そんなにショック?」
サクラが声を上げて笑う。
「……本屋だ。近くに本屋はあるか」
「え? そこを曲がったところにあるけど……」
俺は商店街の奥に向かって地を蹴った。
背後から何かを呼ぶ声や、高い笑い声が聞こえた気がしたが、そのまま足を速める。商店街の建物が視界の端を次々と通り過ぎていった。
再会した同級生と90年代の話で盛り上がる(マコト一人称) yito @yito0824
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