先住民⑥【トニー】
手首に付けられている縄を切られる振動で目が覚めた。
とうやら小屋からは出られないが、動きは自由にしていいようだ。
メアリーは先に起きていて赤ん坊の様子を見に行っている。
少女はそれを無表情で見ている。
昨日は暗かった上、次々に起こる出来事に対応することに必死でよく見ていなかったが、
少女の髪は黒髪ではないようだ。元々の色に何かの着色料を塗って黒にしているのがわかる。
顔立ちもどことなく先住民たちとは違う気がする。
髪は先住民に合わせて塗られたのだろう。
腕や足も、骨と皮だけのように細く小さな傷がたくさんある。
満足に食べさせてもらってないのではないか。
通訳ができるから生かされてるのかもしれない。
俺たちが逃げ出せば責任をとって殺されるのか…
いや、通訳がいなくなるのは痛手だから死なない程度に痛めつけられ…
もう考えるのはよそう、、
俺たちの入っていい領域ではない
少女から少しの水と、干した肉のような物をもらい食べた。
メアリーは数口食べた後、食べかけの肉を差し出した。
「いいよ、これも食べて。」
「え?いや食えよ。大して食べてないだろ?」
「いや、いらない」
伏し目がちに答える。
少し前から気になっていたことがあった。
「ちょっと思ってたんだけど、」
メアリーが顔を上げる。
「お前、いつもあんまり食べないよな。
食べれない理由でもあるのか?」
以前、食が細く食べれない病気があると聞いたことがあった。その病なのかとふと思った。
「ああ、それね…」
とつぶやきメアリーは離れた所にいる親子に目をやる。
「食べれないわけじゃない。食べたくないだけ」
俺に視線が戻ってくる。
「においだよ」
「におい?」
「うん、人間ってね、空腹の時の方が嗅覚が鋭くなるんだ。
この仕事していて、少量の火薬の匂いや血の匂いは大切な情報源だし判断材料になる。
だからあえて空腹にしてる。」
納得するとともに、自分にはそこまでする自信も発想もないことを思い知らされる。
メアリーが少し遠く感じた。
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