盾役の微笑みと終わらない戦線

青藍

冒頭シーンサンプル


霧が、低く垂れ込めた戦場を覆っていた。

近くの湿った土の匂いに混じり、焦げた鉄と古い血の匂いが漂う。

盾の縁に手をかけた指先に、冷たい露がまとわりつき、掌の温度を奪った。


視界の端で、剣の刃が一閃する。光は刹那、雨粒を反射し、空に星のように散った。

弓の弦が震え、風を切る音が耳の奥で鳴る。

遠くで魔獣の低い咆哮が響き、心臓が微かに揺れる。


彼は立っていた。平均的な背丈の少年の肩越しに、最強の4人が並ぶ。

剣聖の剣は月光を映す銀の刃。

賢者の瞳は深海のように暗く、聖女の光は周囲の影を溶かす。

弓聖は微かに笑みを浮かべ、弦をそっと引いている。


「……来るよ」

声は静かで、震えもない。

しかし、振り返らなくても、伝わる。

盾の重み、腕の痛み、全身に刻まれた古傷の感覚。

痛みはまだ、全身に走っている。


一歩前に出るたび、土の匂いと血の匂いが混ざり、湿った空気が呼吸に絡む。

盾に受ける衝撃は骨の奥まで届き、内側から震えが走る。

それでも、彼は笑った。


「大丈夫。まだ立てる」


背後で、最強たちの視線がジメジメと絡みつく。

彼の笑みを、誰も口には出さず、ただ確かめるように見つめていた。


戦線は、今日も終わらない。

彼が、立ち続ける限り——。


―――――――――――――――


ここまで読んでくれてありがとう!

冒頭だけの公開なので、この先を書くかはまだ未定です。

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