第4話 AI禁止郎の “新提案” 👊🏻🔥
「AIの文句は俺に言えェェェ!!!!!」
編集部フロアに、雷鳴みたいな怒号が落ちた。
空気がビリビリ震え、会議室のドアがバーンと跳ね返る。
逆光の中から黒い影がゆっくりと歩み出る。
――AI禁止郎だ。
天井の蛍光灯が後光みたいに彼を照らし、黒いロングコートは風もないのに揺れ、ジェルで固められたオールバックがギラァッと光る。
拳を天へ突き上げ、咆哮。
「AI作品が面白いだと……!? ならば聞けッ! 文章に命を吹き込むのは、テクニックではない!! “魂”だァーーッ!!!」
いや誰もそこまで言ってないんだけど。
というか、話し合いの空気どこ行った?
編集者の一人が、おずおずと手を挙げた。
「あ、あの……禁止郎さん……でもAI作品のほうが読者にはウケそうで……」
「黙れェ!! 貴様はもう少し自分を信じろォッ!!!」
AI禁止郎の拳がテーブルにズドンッ!!
資料が宙を舞い、ペットボトルが悲鳴を上げて転がる。
「AIが作るのは“文章”ッ! だが人間が作るのは“体験”ッ!! 生き様、迷い、涙、後悔、希望……ッ! その全てが文章を通じて“魂”となるのだッ!! 魂なき文は、ただの記号の羅列ッ!!」
隣の編集者が震え声で尋ねる。
「で、でも……その“魂”って……数値化できますか……?」
「できるかァーーッ!!!!」
「「「できないんかい!!!」」」
フロア全員が総ツッコミ。
会議室のはずなのに、完全に闘技場だ。
AI禁止郎は荒ぶるオーラを一度吸い込み、拳をゆっくり下ろし、低く告げる。
「いいか……AI作品を見分けるのに“手書き度”などいらん……」
(いや、俺のさっきまでの作業、否定しないでくれる? ずっとアプリに作品の読み込みさせてたんだけど?)
「じゃあ、何で判定するんですか?」
編集者たちが息を呑む。
AI禁止郎はゆっくりとフロアを見回し……なぜかピンポイントで俺へ視線ロックオン。
(おい待て、嫌な予感しかしない)
「“作者へ直接インタビューし、創作の道を語らせる” ――それが唯一無二の基準だァッ!!!」
会議室が揺れた。
「AIが吐いた文章では、“なぜそう書いたか” を語れん! 魂なき者は、言葉の源泉を語れぬ! 問いただせば、その場で崩れ落ちるのみッ!!」
――たしかに。
実際の出版社でもAI疑惑対策としては王道だ。
(でもさ……インタビューしても、AIで回答作られたら終わりじゃね? 結局、アナログに戻ってないか? DXどこ行った?)
AI禁止郎はズカズカ歩み寄り、俺の肩をがっしり掴む。
「そして……ポリ助!! お前がその“魂のインタビュー担当”だァッ!!!!」
「……は???」
会議室の視線が、俺へズブズブ刺さる。
英雄を見る目じゃない。
厨房のバイトに「皿洗い追加でお願いね」をする時の目だ。
(いやなんで毎回俺!? 俺そんな “何でも屋” のスキルツリー取った覚えないんだが!?)
そこへ編集長が止めに入る……かと思いきや、
「ポリ助君……すまん。だが、これは編集部の未来のためなんだ……!」
(いや編集長! もっとこう、“救いの手” とか……差し伸べて!?)
編集長は額を押さえながら、ぼそっと漏らした。
「AIの進化が早すぎるんだよな……もう何が正解なのか、俺にも分からん……」
(いや弱音吐くのそこ!? だったらなおさら俺に丸投げすんなよ!!)
「君の“手”が必要なんだ……! 未来を切り開く手が……!!」
(編集長……それ絶対、俺の“手”=労働力のことですよね……? 未来とか言いながら完全にこき使う気ですよね……!?)
本来ならこういうとき、誰かが “救いの手” を差し伸べてくれてもいいはずだ。
なのに――
(見渡しても、差し伸べられてるの、AI禁止郎の拳だけなんだよなぁ!!! 拳で救われるかぁぁぁッ!!!)
とはいえ、ここで逃げ出すのはポリ助流じゃない。
“新人=何でも屋”として、この無情な編集部サバイバルを生き抜くには、文句を言いつつも前へ進むしかない。
こうして俺はまたしても、地獄の新任務――
AI作品インタビュー係として、編集部という戦場に突き落とされることになった。
(……あたぁ!)
虚空を殴りたくなるAI禁止郎の気持ち、ちょっとわかる気がした。
〈完〉
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