禁忌の花嫁と触れれば罪と言われた令嬢

一ノ瀬 彩音

第1話 リノンという人

英子はなは小さい頃から、自分が同性に対して憧れに似た想いを抱く事に薄々気づいてはいた。

しかし、まさか、それがこんなにも激しいものとは思っていなかった。

そんな英子はなは母親の反対を押し切り、流花女学院に進学するのです。

理由はこの学院は寮生活で全寮制である事と、その学院がある特別な存在として、生徒たちに畏怖されているからであった。

その学院は流花りゅうか女学院という女子校で、全寮制の学校だったのです。


その後、英子はそのまま自身が暮らす寮のお部屋へ迷子になりながら向かいます。

そして、ある部屋の前にたどり着きます。

英子は緊張しているのか、じっとしているとそのお部屋の扉が開くと中から出てきたのは見知らぬ少女だった。

その子の名前はリノンという可愛らしい名前の少女だったのです。

その子は英子の顔を見るなり、突然、手を握ってきてこう言うのです。


「私とキスしてくれませんか?」


もちろん、そんな事、初めて言われる英子は驚き戸惑いますが、リノンの勢いに押されて従ってしまうのです。

そうすると、次第に唇を重ね合わせてキスをしてしまう二人。


「んっ……ちゅぷっ……」


やがてお互いの舌が絡み合い始めるようになると、そこから一気に加速していくように激しいディープキスになっていったのです。

それはまるで恋人同士のような濃厚なものになっていたんです。

さらに、互いの唾液を交換するように口づけを深めていく2人であったのでした。


「ごめんなさい、こんな事をして、でもこれから同室だし、

仲良くなる為のキスだから許してね」


リノンの言葉に困惑しながらも、とりあえずお部屋の中に入る事にしたのでした。

そして、そこでリノンが口にするのです。

そう、それはこう言う台詞でした。


「ねぇ、私たち恋人になろうよ」


これには流石の英子も驚いてしまいましたが、考えてみると彼女には確かに好意を持っていた事もあり、それを機に交際する事に決めたのです。

ちなみに、それからというもの、毎晩のようにキスを求められてしまうのですが、嫌ではない自分に戸惑うばかりなのでした。

また夜は一緒に寝ているのですが、添い寝だけではなく、体を密着させた状態で抱き合って眠るので、興奮して眠れない日々が続くようになってしまったのです。

ただ、それはそれで幸せなので問題は無かったのです。

一方で、学園での生活が始まって数週間が経つ頃になって、今度は別の悩み事が出来てしまったのです。


それはクラスメイトとの関係でした。

リノンとの関係は良好で、学校生活にも慣れてきて順調なのですが、友達作りが苦手で、なかなかクラスに馴染めないのが現状だったのです。

特に、他の生徒達との距離感を掴めず、どう接したら良いのか分からずに困っているというのが正直なところでした。

その上、リノンの方は成績優秀なだけでなく運動神経抜群の美少女で、クラスの人気者になっていたから余計に自分は浮いているような気がしてならなかったのです。

そんな時に、ある事件が起こりました。


それはある日の事、英子がお手洗いから戻る途中でした。

その時です。

突然、背後から抱きつかれてしまったのです。

しかも、その相手はなんとリノンでした。

彼女は悪戯っぽい笑みを浮かべながらこう言ったのです。


「ねぇ、私と一緒に遊びましょうよ?」

「え? いや、でも授業が始まっちゃうし」


そうすると、その答えに不服そうな表情を見せるリノンでしたが、次の瞬間にはニヤリと笑うと再び耳元に口を近づけて来ると言いました。


「私達、恋人だよね、そんな事を言っていいの?」


その声は甘く囁くようであり、同時にゾクッとするような不思議な魅力がありました。

英子は心臓がドキドキし始めると共に顔が熱くなっていくのを感じていました。

そうすると、それに気付いたのか、彼女はさらに追い打ちをかけるようにこう続けるのです。


「本当は授業なんてどうでもいいって思っているんじゃない?」


それはまるで誘惑しているかのようでした。

そして、英子が返答に困っている間に、今度は首筋にキスをしてきたのでした。

それにより、全身に電気が走ったかのような衝撃を受けてしまいます。

さらに、そのままゆっくりと下に移動していくと鎖骨辺りに吸い付くようなキスをされました。


「ひゃっ!」


思わず変な声が出てしまいましたが、それでも止めようとはしませんでした。

むしろ、もっとしてほしいと思ってしまっていました。


「キスしたいよね? するよね?」


再び囁かれると、もう我慢できなくなってしまいます。

気が付けば、自らも舌を出して応えていました。

そして、しばらくの間、お互いの唾液を交換し合う行為を続けていたのですが、ようやく満足したのか解放されると、大きく息を吐き出していました。

その後、二人は何事も無かったかのように教室へと戻っていくと、自分の席につきました。

しかし、心の中では、もっと続けたいという欲求に駆られてしまっていました。

それでも、何とか耐える事ができたのは奇跡的な事だと思います。


一方、英子はと言えば、先程までの行為について考えていたのです。

何故、あの時、あんな風に反応してしまったのでしょうか?

今まで感じたことが無いほどの快感を得られた事は確かです。

ただ、それ以上に気になる点があったのです。

それはリノンの行動についてでした。


彼女はどうして、あんな大胆な行動に出たのでしょうか?

いくらなんでも、少しやり過ぎなのではないでしょうかと考えてしまうほどなのです。

ただ、一つ言える事は、彼女に対する恋心は日増しに強くなっていると言う事です。

そのため、少しずつ彼女の事を意識するようになっていたのです。

その日の放課後に、リノンに誘われて遊びに行くことになりました。


目的地は近くにある喫茶店でした。

そこは純喫茶と呼ばれる古風な雰囲気のお店であり、レトロな雰囲気が漂っていました。

店内に入ると、マスターらしき男性がカウンター越しに出迎えてくれました。

彼の見た目は三十代くらいでしょうか。

細身で長身のイケメンといった印象を受けます。


また髪型は七三分けにしており、黒縁眼鏡をかけていました。

彼の外見からはとても真面目そうで誠実なイメージを受けます。

一方、内装については、昭和初期を思わせるような造りとなっていました。

壁一面には本棚があり、そこには様々な種類の書籍が並んでいました。

そのラインナップを見ただけでも、相当な読書家であることが伺えます。


その他にも、年代物と思われる蓄音機やジュークボックスなども置かれていました。

テーブル席の横にはピアノが設置されており、ゆったりとした曲調のクラシック音楽が流れています。

窓際のソファー席に座ると、ウェイトレスらしき女性がやって来ました。

年の頃は二十歳前後くらいでしょうか。

髪型は肩まで伸びたストレートヘアーであり、色白の肌に大きな瞳を持つ美人さんでした。


また胸元には名札が付いており、それによると名前は『紗凪さなぎ』というようです。

注文を取り終えると、厨房の方へと消えて行きました。

その間を利用して、改めて周囲を見渡してみることにしました。

そうすると、奥の方にあるテーブル席に座っている人物に目が留まりました。

そこに居たのは一人の若い女性でした。


年齢はおそらく高校生くらいでしょう。

彼女はこちら側に背を向けているため、どんな容姿をしているのか分かりませんでしたが、長い黒髪が特徴的でした。

それにしても、随分と遅い時間帯なのに、客入りが多いです。

そんなことを思いつつ、ふと正面に視線を向けると、リノンが微笑みかけていました。

その笑顔を見ただけで、鼓動が高鳴り始めるのを感じます。


そうすると、彼女はゆっくりと立ち上がると、こちらに向かって歩いてきました。

そして、目の前まで来ると屈み込み、顔を近づけてくるではありませんか。

突然のことに動揺してしまうものの、何とか平静を保とうとします。

しかし、そんな努力も虚しく、すぐに唇を奪われてしまいました。

柔らかい感触と共に甘い香りが鼻腔を擽ります。


さらに、舌まで入れてくる始末。

これには堪らず、彼女の両肩を掴むと引き剥がしました。

息遣いも荒く、顔も火照ってしまっているのが分かります。

一方でリノンの方は余裕たっぷりといった様子でした。

それでいて、どこか妖艶な雰囲気を漂わせているのです。


その姿はまるで魔性の女そのものといった感じです。

そして、次の瞬間には耳元に口を寄せて来て、こう囁いたのです。


「もっと気持ち良くなりたいでしょ? だったら、ここじゃなくて個室に行こうよ」


そう言い終わると、手を引いて店の奥へと連れて行かれました。

辿り着いた先は、先程まで女性が座っていた場所でした。

そこには扉があり、開けてみると中は寝室のようになっていました。

ベッドの上には枕が二つ置いてあります。

恐らく、ここで休憩するつもりなのでしょう。


「何で喫茶店なのにこんなお部屋があるの?」

と訊いてみるも、答えは返ってきませんでした。


代わりに返ってきたのは妖しい微笑みだけでした。

そして、そのまま手を引かれるとベッドへと押し倒されてしまいました。

そうすると、今度は自分の上に覆い被さるようにして迫ってきました。

その表情には普段のおっとりとした様子はなく、妖艶で危険な雰囲気を漂わせており、まるで別人のようでした。

しかし、その瞳だけは獲物を狙う獣のように鋭いものになっていました。


そして、次の瞬間には唇を重ねられてしまいました。


「んっ……」


突然のことに驚きつつも、抵抗できずに受け入れてしまいます。

最初は軽く触れる程度のものでしたが、次第に激しさを増していき、最終的には貪るようなディープキスへと変わっていきました。

舌同士を絡ませ合ったり、歯茎の裏などを舐められたりと、されるがままの状態が続きます。

どれくらいの時間が経過したのか分かりませんが、ようやく解放される頃には息も絶え絶えになっていました。

そこでふと我に返った英子は慌てて体を引き離しました。


「ねぇ、どうしてそんな事をするの? 英子。酷いよ」


リノンの目には大粒の涙が浮かんでいました。

今にも泣き出してしまいそうな表情を見て罪悪感を覚えましたが、同時に可愛らしいとも思ってしまいます。

そんな彼女を宥めるようにして優しく抱きしめてあげました。

そうすると、安心したのか、やがて落ち着きを取り戻していきます。

一方、英子はと言うと未だに困惑していましたが、それでも何とか状況を整理しようと試みます。


まずは周囲の状況を把握する為、辺りを見回しました。

まず最初に目に付いたのはベッドの上に置かれている枕でした。

それは二つあり、その内の一つを手に取ろうとした時に異変が起こりました。

突然、背後から誰かに抱きつかれてしまったのです。

驚いて振り返るとそこにはリノンの姿がありました。

彼女は悪戯っぽく笑うとこう言いました。


「英子って本当に可愛いよね」


そして、そのまま押し倒されてしまうと濃厚なキスが始まってしまいました。

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