世界を書き換える【概念ハック】バトロワに参戦したが、自分の作ったルールの矛盾で勝手に爆死して戻ってくる男。~自称芸術家の美しい自爆録~
夜行
第1話 群馬(エチオピア)の晩餐
空に突き刺さった岩の柱、妙義山テプイ。
標高2000メートルの断崖絶壁の縁に、カジーノ・デ・ゼンザ・イサント・カシタは立っていた。吹き荒ぶ風が、彼の黒いマントを芸術的にたなびかせ、落ちそうになる。
「…五月蝿いな」
カジーノは、視界の端で点滅する【デスゲーム開始】のシステムログを鬱陶しそうに手の甲で払い除けた。彼の瞳は、眼下に集まっているであろう「真面目な参加者たち」を、まるで使い切りのクレヨンのようだと空想している。
参加者の一人、銃火器を持った男通称「重課金」とおぼしき人物が、手を振りながら叫んだ。「カジーノ!その首、俺様の『重力弾』でひしゃげさせてやるぜ!」
?
何も聞こえない。当たり前だ。我々は断崖絶壁を介して立ち会っている。
地上と山頂。2000メートルの垂直距離。
男の叫び声はただの空気の震えに消え、カジーノには男が「口をパクパクさせながら激しく踊っている」ようにしか見えない。
だが、カジーノは、巨漢が構えた「クジラほどの大きさがあるランチャー」に視線をロックオンした。
【対象:鉄(アイアン)】 (プロトコル適格:境界は明瞭)
「お前の鉄は少し・・・重そうだ」
カジーノの右手——書き換え(Law)の権能が動く。2000メートル下にある弾頭に追記された、新しい物理法則。
【追記:対象の『質量』を『思い出』に変換する】
「……重力に縛られるから、お前は重い男なんだ。」
カジーノが指を鳴らす。
直後、放たれたはずのクジラサイズの弾頭から、すべての「重さ」が消失した。
数トンの鉄塊は、発射された瞬間に「実体のない淡い記憶」へと変質。
重力弾は破壊のエネルギーを失い、ただの「初恋の甘酸っぱい残り香(レモン味)」と
「夕暮れのチャイムの切なさ(メジャーセブンス)」を撒き散らしながら、ふわりと空へ溶けていった。
発射した男は、あまりの情緒の溢れ方に、その場に膝をついて号泣し始めた。
「……五月蝿いな。泣くなら他所でやれ」
カジーノは一瞥もくれず、断崖の縁で危うくバランスを崩しそうになりながら、マントを翻す。 彼の目には、もはや戦場など映っていない。
「第1話、デスゲーム、終了だ」
誰にも聞こえない独り言と共に、彼は悠然と、しかし足元をフラつかせながら山頂の奥へと消えていった。余裕勝ちだった。
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