コンサート
付き合ってからというもの、時間が合えばいつも一緒にいた。今まで離れていた時間を取り返すように。
「今度コンサートすることになったんだ。少し大きな会場で。」
「ほんとに?やったじゃないですか!」
プロとして活動し始めた私の大好きな先輩のピアノが世間からも認められて来たことがとても嬉しかった。
「うん、やっとだよ。俺のコンサート来てくれる?」
「絶対行きます。」
「ありがと。」
コンサート当日。多くの人が会場に入っていく。みんなチラシを見て楽しみにしているようだった。その光景が、先輩に今までのことを思うと、とても嬉しくて、心がジーンっと暖まるように感じた。
会場の席に座る。彼が取ってくれた席は彼の顔がはっきり見えそうなほど近い席だった。その時先輩からメッセージが来た。
「行ってくる」
たった一言だったけど、彼の覚悟を感じた。
「行ってらっしゃい」
会場が静まり返っている中、彼がステージに立つ。スーツをかっこよく着こなして髪も綺麗に整えている。礼をしてからピアノの席に着く。少し大きくなった身体、大人っぽくなった顔立ち。成長はしていたが、演奏する姿が、初めて彼のピアノの聞いた時の姿に重なった。
彼の指が鍵盤に触れると、優しくて暖かい音が会場に広がった。一音一音が心の奥まで響いてくる。ずっと前に音楽室で聴いていた私の大好きな音だ。
曲が終わる度に会場が拍手に包まれる。彼の音がみんなの心にも届いたと思うと、嬉しくて胸がいっぱいになった。
コンサート後、彼の楽屋に行く。
「お疲れ様です。今日の演奏……本当に、感動しました。」
「ありがとな。……実はさ、今日、愛華に伝えたいことがあるんだ。」
彼は照れくさそうに笑いながら目線を逸らす。その後覚悟を決めたような顔をして、カバンの中から小さな箱を取り出す。その箱を開けると中にはシンプルだけど上品な、銀色に輝く指輪が入っていた。
「俺さ、いつか自分のコンサートを開いた時に、その日に愛華に伝えようって、昔から決めてたんだ。これからも愛華と演奏したい。ずっと一緒にいたい。俺、愛華にとって恥ずかしくない男になるから、……だから、俺と結婚してください」
彼は結果が怖いのか目を固く瞑っている。最近は大人っぽくなって堂々としていたのに、急に学生の頃に戻ったみたいだ。そんな彼が愛おしく見えた。
「……はい。こちらこそよろしくお願いします。」
「……ほ、ほんとに……?」
彼は固く瞑っていた目を開け、私と目が合う。その目には嬉しさが滲み出ていた。
「私もこれからずっと玲先輩と一緒に演奏したいし、一緒にいたいです。私も先輩の奥さんだって胸張って言えるように、もっと頑張ります。」
「……ありがとう、、本当にありがとう。これからもよろしくね。」
「はい!」
彼の目には涙が浮かんでいた。そんな彼を見て、私も涙が溢れてしまう。
「また泣き虫か?」
泣いていてもいつもの弄りを忘れない先輩に笑みが零れる。
「先輩も泣いてますよ?」
「愛華のがうつったかな?」
楽屋は笑い声で溢れた。
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