黒は祈りと並び立つ
与太郎
第1話 どストライク
仰々しい扉が開きこの国の兵が一人入ってくる。
ただの兵では無い。この国最高の騎士の証である漆黒の鎧に身を包み現れたのは黒騎士。
玉座の間は静まり返っていた。
「黒騎士よ」
王の声に黒騎士は片膝をつく。
「聖女様の護衛を命じる。」
その言葉に微かなざわめきが起こった。
当然だ。聖女は国の象徴。王と対等の権力を持つ存在。決して剣の届く距離に置かれる存在では無い。
黒騎士は突然の命令に驚くどころか、微動だにせずただ答えた。
「御意」
―――――――――――――――――――――――
王都大教会の最奥、大聖堂で彼女は跪いていた。
祈りの言葉はもはや口癖のようで私にはそれが不自由に見えた。
「聖女様」
聖女様の肩がびくりと震え彼女は恐る恐るこちらを向く。
どストライクだった。
自分の未来を諦めながら他者に尽くそうとする無垢な瞳
地に影を落とすまつ毛
戦いなど知らないであろう陶器のような肌
肩ほどまで伸びたシルバーの髪
庇護欲を掻き立てられる小さな体
全てが好きだった。
「本日より貴方様の護衛を務める」
声は震えていたと思う。
しかし、それだけを告げ私は壁にもたれる。彼女の祈りを害さないように、下手に干渉しないように。
踏み込まないと決めた距離。
あくまで私の目的は彼女の護衛、あくまで私は王の剣、余計な私情などいらないのだ。
ざわつく胸を抑え黒騎士は護衛の任についた。
―――――――――――――――――――――――
夕食に毒を入れられた。
自分の治癒魔法で対象で来たらから一命は取り留めたが正直死にかけた。
犯人は信頼してたメイドだった。
今までの全てが聖女である私を殺す為の演技だった。
何も信頼できなくなった私はふとある噂を思い出した。
王国の剣。
王に仕え、王の命令を順守し裏切らない黒騎士。
そんな騎士に興味が湧き王に無理を言い彼を私の護衛にした。
「聖女様」
彼はその外見とは対象的に静かに私の後ろに現れた。
正直びっくりした。
彼は私を見定めているのか数秒こちらを見て固まると無愛想に言った。
「本日より貴方様の護衛を務める」
そう言うと彼は距離を置き壁にもたれかかった。
その距離が絶妙に心地よくて、祈りに集中してしまった。
夕食の時だった。最近出るのは毒味済みの冷めた食事。
刺客対策として護衛以外の人には出てもらった。
しかし、ついこの前毒殺されかけた訳だ。
当然食欲なんて無い。
しかし残すのも申し訳ない。
―――断られるのを承知で黒騎士に頼んでみた。
「黒騎士さん、ちょっと私、お腹すいてなくて…食べてくれない?」
そう私が言うと彼は迷った素振りも見せず一言、
「遠慮しておこう」
(少しは迷えよ!)
「いや、本当にお願い!これは命令よ」
珍しく彼は少し悩んだ仕草を見せこくりと頷いた。
「命令とならば…」
彼は隣のイスに座ると兜を外しスープに口をつけ始める。
どストライクだった。
まるで自分を映していない真っ黒い瞳に神秘的な漆黒の髪。
鎧の隙間から見える鍛えられた肉体。
全てが完璧だった。
彼が訝しげな目でこちらを見てくる。
それすらも絵になって最高だった。
今宵は久々にいい夢が見れそうだ。
黒騎士は聖女がそんなことを考えている事など微塵も知らず冷めた飯をかっ食らうのであった。
黒は祈りと並び立つ 与太郎 @rkg_rei
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