同い年に遠慮はナシ。
𝗿𝗶𝘁𝘀𝘂
第1話 再会
愛知県名古屋市内、某高等学校。
P.M.20:00
冬至の時期で、20:00になると、空は完全に真っ暗になっていた。
吹奏楽部、陸上部、バスケ部、サッカー部…
あらゆる部活動は、とっくの前に解散していた。
しかし、校内の大きな第1体育館。
ここは構内の3つの体育館の中で、いちばん大きい体育館。
この体育館だけ、明かりがついていた。
第1体育館で活動する部活動は、女子バレーボール部と男子バレーボール部。
最近、新人戦を終えたばかりの両部の部長が、体育館に座り込み、なにやら話し合いをしていた。
「ついに女子も負けたか。」
「さすがに、クラブチーム相手だとね。
男子は何回戦だっけ?」
「俺らは3回戦。」
「…そっか。」
暗闇のなかで話し合いをするのは、男子バレーボール部の部長、東怜(あずまれい)と女子バレーボール部の部長、雨宮つづり(あまみやつづり)のふたり。
中高と同じである2人は、中学時代にベストアタッカーとベストリベロに選ばれた優秀者。
バレーボール強豪校のこの高校で、日頃から切磋琢磨している。
「つづりは、どうだった?2年と1年。」
怜がつづりに聞く。
つづりは、んー、と相槌を打って
「動きは結構良かった。ただやっぱり、基礎ができてない子が多い。とくに1年生かな。」
と言った。
つづりの言葉に、怜が深く頷く。
「男子も同じ感じ。
…………俺らさ、」
「ん?」
突然、怜が言った。
「もうすぐ、卒業だな。」
「……そうだね、卒業だ。」
ふたりは高校三年生。
共通テストを終えて、後は結果発表を待つのみ。
「俺さ、卒業しても、つづりと仲良くしたいんだけど。」
「えっ、」
「あ、ダメだった?」
「う、ううん!そんなことない!嬉しい!
仲良く、しようね!」
ふたりの頬は、心なしか赤くなっていたように見える。
これは、卒業式3日前の、寒い寒い冬の日の出来事。
1ヶ月後。
名古屋市内、上倉大学(あけくらだいがく)
キャンパス内第2体育館
「はーい、みんな集合してー!
今日から1回生も練習に加わります、
じゃあ自己紹介を……右の方から!」
大学4回生の大きな体をしたキャプテン、外江(とのえ)が大きな声で言った。
体育館の入口にずらーっとならんだ期待の新人エースたちの目は、緊張にまみれていた。
そして1番右に並んでいた人物とは……。
「あ、雨宮つづりです、マネージャーです、
お願いします……」
「はい、マネージャーが今年は入ります!
先輩マネの鳴海に教えて貰ってね色々。
はい次の人!」
「……あ、東怜です…………。
お願いします……。」
「東くんはあの強豪𓏸𓏸高出身で―。」
(な、なぜ!)
(なんで!)
((なんでこいつ[つづり、怜]がここにいる!!!!!))
1ヶ月後、部長コンビ、奇跡の再会。
「はい、じゃあとりあえず休憩ねー!」
一通りのストレッチ、ランニングを終え、外江キャプテンか叫んだ。
私は3回生の先輩マネ、鳴海さんに
「ちょっとすみません、」
と声をかけて、怜に近づいた。
私の存在に気づいた怜は、私に手招きした。
私たち二人は、体育館を仕切るオリーブ色のカーテンの裏に隠れ、コソコソと密会。
「ちょっと!アンタ下倉大学じゃなかったの!?」
「落ちたんだよ!!!!
お前こそなんで、マネージャーなんてやってんだよ!!、!選手やれよ!!!」
怜の目指していた下倉大学は、上倉大学のツーランク上くらいの名門大学。
怜はそこそこかしこかったはずだけど、なんでまた上倉に???
私たちはお互いに言葉をぶつけたあと、なにも言わなかった。
(……高校の頃甘酸っぱい感じでさよならしたよね?ってか私確実に怜のこと好きだったよね!?なんでまた再会!?
もう合わない気でいたんだけど!?)
(なんでここにつづりがいるんだよー!、
なんか両思いっぽかったよな?
ほぼ確だったよな?
俺結構アピールしてたよな!?
てかなんでマネ!?大学落ちて再会……)
つづりと怜のふたりの頭の中は、カオス状態だった。
そう、2人は高校時代、両思いであった。
詳しく言えば、両片思いとでも言おう。
まわりの友人たちは確実に気づいていたが、結局2人が高校生のうちに結ばれることはなかった。
というか、結構いい感じの別れ方をしたのだ。
つづりも怜も、高望みの大学を受験しようとしていたため、色恋沙汰ではなかった。
お互い、受験勉強のため、告白しなかった。
つづりは告白してくるのを少し期待していた部分が実はあるのだけど、結局怜は告白して来ず。
自分から伝える勇気は、つづりにはなかった。
怜は告白しようかギリギリまで悩み、友人の余計な「んー、ふたりは友達に見える。」という一言がきっかけで告白を辞める。
最終的に卒業しても友達。という選択をした。
つまり何が言いたいかというと、
ふたりとも再会する予定なんて、どこにもなかったのである。
「……マネージャーしてるのは色んな事情。
本当は再会するつもりなんて微塵もなかったけど……。」
「……おう。」
「せっかく同じ部活だし、また仲良くしよ。
私たち卒業しても友達だもん、ね…。」
つづりは引きつった笑顔で言った。
(だめだ、顔みたら、高校時代を思い出す!
まだ、好きになっちゃう、!、!!)
怜は干渉してこなかった。
というか、怜も同じ気持ち。
「……ああ、そうだな、それがいい。」
私たちの青春は、お互いの胸の内で、消えてしまったみたいだ。
つづりはなんだかそれが無性に悲しくなって、怜に
「ごめん、じゃあ鳴海さんに呼ばれてるから。」
と伝え、鳴海のもとへスタスタと帰っていった。
怜はそんなつづりの様子をじっと見ていた。
ベストリベロ賞をとるほどのリベロの実力があって、高校は愛知一の強豪校出身。
学力は上の中くらいのこの上倉大学に、現役合格。
怜が知らないうちに、つづりに何があったのだろう。
怜はそんなことを考えていた。
そんな時、同じ1回生の八次明(やつきあきら)に練習に戻ってくるよう呼ばれた。
怜は明のもとへ小走りでかけていった。
大学で再び再会したつづりと怜。
お互いの恋心には重い蓋をしたままのふたりだが、ここからどのように関係は変化していくのだろうか。
同い年に遠慮はナシ。 𝗿𝗶𝘁𝘀𝘂 @richan416
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