エンプティ・ガール

蒼月龍華

第1話


 人は、簡単に死ぬ。


 人間は、争いから逃れられない。


「それでも私は、空っぽのまま死にたくない」


「生きたいよ」


 少女は空を見上げる。


 泣きたくなるくらい綺麗な青空だった。






◇◇◇



 レースやリボン、フリルなどの装飾をふんだんにあしらったアンティーク調のドレスを身にまとった少女が走っている。また、彼女は明るい茶髪のボブヘアに、透き通るような空色の瞳を持った美しい少女であった。


『アクアオーラ、前方に1体発見。気をつけて!』


「了解」


 アクアオーラと呼ばれた少女に注意を促したのは、相棒である【付喪ツクモ】という機械の妖精だ。

 対するは、機械の体を持つ凶暴な生命体【空繰カラクリ】。

 空繰カラクリはアクアオーラを見つけると、襲いかかろうとする。


「【ウォーターソード】」


 アクアオーラがそう唱えると、手から水が湧き出て、それは剣の形になった。


 人々はこの様な力を【魔法】と呼ぶ。


〖ヴゥォォォォ!!〗


 空繰カラクリはまるで獣のように、機械でできた鉤爪でアクアオーラへと攻撃する。

 しかし、アクアオーラは軽やかな動きで回避して、空繰カラクリへと剣を振る。


〖ギャッ!?〗


「さよなら」


〖ギャアァァァァッ!!〗


 斬撃を次々に喰らわせれば、空繰カラクリは悲鳴を上げた。

 やがて空繰カラクリは、ドカーン!! と爆発する。

 機械の体であるため、分解したパーツがバラバラと散らばった。

 派手に爆発こそしたが、パーツを完全に破壊したわけではない。


『お疲れさま、アクアオーラ』


「ああ。後はパーツを回収する」


 そう言って、アクアオーラは先ほどの魔法を解除した。

 散らばったパーツを拾い、一箇所に集める。そこに付喪ツクモが魔法をかけると、パーツは光った後に無くなった。格納魔法だ。


「……毎回思うんだけど、わざわざ回収する必要ある?」


『うん。こいつらはバカでも、腐っても一応は同じ神の眷属だから。できるだけ、ね』


「そう……」


 【メカードギア】という機械の身体を持つ神がいる。付喪ツクモ空繰カラクリはメカードギアの眷属だ。

 空繰カラクリはパーツを完全に破壊せずに、組み立てて修復すれば何度も復活することができる。付喪ツクモ空繰カラクリを殺したいわけではなく、空繰カラクリの目的を阻止したいらしい。

 その目的とは〝メカードギアの復活〟だ。

 メカードギアは、この【ジパニーズ】という国を守護する神。しかし現在は眷属たちに国の守護を任せ、機械の身体を自ら分解して眠りについている。

 何千年も国を守ってきた神、メカードギアに付喪ツクモはゆっくり休んでほしいと願っているのに対して、空繰カラクリはメカードギアに起きていてほしくて暴走しているそうだ。


『戦いの後にも苦労かけてごめんね。なるべく一箇所にまとめた方が何度も魔法かけなくてすむから……』


「別にいいよ。このくらい、大した事じゃない」


 言葉を交わしながら、一人と一匹は歩いていく。



 彼女は、魔法少女。

 この国を守るために戦う。

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