ライオン
@mira20
第一話
ライオン
移りゆく景色を
幾度とこの場所から見ていて。
今年で七年目だなとふと思う。
色褪せていく思い出を
失うことのないように
必死に、思い返す。
それがとても切ない。
その切なさに恋をして。
久しぶりに会って久しぶりに会話をした。
「五年ぶり、かな。」
そんな彼の姿は記憶の中にはなくて
友人のSNSでたまに見かける、彼の姿だった。
お互い緊張してぎこちなくて、ただこの機会に話していたくて
よくわからない会話を続けた。
中学の同窓会。話しかけたのは私からだった。
話題を考えもせず、話したいと言う気持ちのまま彼の近くまで歩いた。
彼はすぐ、私に気づいた。
多分、彼も話したくて私のことを視界の端で見ていたのだと思う。
「久しぶりだね。」
彼の落ち着いた話し方。でも懐かしい声ではない。今の彼の姿で今の彼の声で。
誰か初めましての人と話している気分だ。
「このあとはクラス会?」
そう聞く彼。うん、そうだよ。なんて答えて、でも会話を終えるのが悲しくて。
「肌、綺麗だね。」
どのテンションで話すべきかわからず、そんなことを言う私に彼は、「他の友達にも言われたよ。」と笑った。
「綺麗になったね。」
お互いの緊張が混じり合っているぎこちない空気の中、そう言われた。
単純に嬉しかった。
「すごくいい思い出だったよ。ありがとう」
最後に伝えてくれた。その瞬間私は今までの後悔の気持ちが蘇ってきた。
家に帰っても気持ちが浮ついたまま、離れられなかった。
私は彼と、中学3年生の頃、一年ほど付き合っていた。
中学生の恋愛なんて子供の恋愛だと、私は思う。
でも、彼との恋は違った。
彼はとてもいい人だった。素敵な人だった。そして、みんなより少し大人だった。
私は、まだまだ子供だった。
中学を卒業して、別々の高校に入学した。
いつの間にかお互いの気持ちが離れ、6月に別れた。
LINEでそっけなく。
中学の時の私は、少し調子に乗っていた。
だから黒歴史だった。
彼を傷つけたこともあった。
だから思い出したくなかった。
それから高校生活を過ごした。
友達が増え、また新しい彼氏もできた。
中学の彼を思い出すことはなかった。
でも、ある年の夏、テレビをつけると高校野球が流れていた。彼の姿が映った。
頑張っているなあと、その時間だけ彼のことを応援した。
多分同じ年の夏。地元のお祭りに行った。
あの時の彼を見た気がした。でも、勘違いだったかもしれない。
その日私は彼氏と喧嘩をして、仲直りしようと必死だった。
無事、仲直りした。
その年の3月卒業した。
今までで一番辛く、でも楽しく、たくさん成長した高校3年生だった。
彼氏とは別れた。
春、友達経由で中学の彼の進学する大学を知った。
私よりいい大学で、少し悔しかった。
ただそれだけだった。
それだけなのに。
同窓会で会って、少し会話をして、頭から離れられなくなってしまった。
でもこれを「成人式マジック」と呼ぶのは癪だった。
私が黒歴史だと思っていたことが、彼にはいい思い出だったと知ることができて、嬉しくて安心した。
そして気づいた。
私は彼にありがとうと伝えていなかったことに。
とても悩んだけど、彼に連絡した。
――――――――――――――――
「今日はありがとう。急な連絡ごめんね。いい思い出だったって言ってもらえて、嬉しくて、その上で改めて謝りたくて。中学の頃の私は正直調子乗ってて、だから傷つけたことも多くあると思う。それを今までずっと後悔して、黒歴史だって思ってた。本当にごめんね。でもあなたとの恋愛でたくさんのことを学べた。本当にありがとう。」
しばらく、連絡が返ってこなかった。
寝ようとしたけど、返信が気になって眠れなかった。
「こちらこそ話しかけてくれてありがとう。中学生の頃に真剣に君を好きになって、ただ純粋な恋愛をできてよかったよ。ただ一つ言いたいのは、俺にとってはいい思い出だから黒歴史とは思わないでほしい。最後に、懐かしいことを色々思い出して少し泣きそうでした。今の彼氏と末長くお幸せにね。」
2時間待ってやっと返信が返ってきた。
何回も読み直した。
彼が、私のメッセージに既読をつけてからたくさん時間をかけて考えて、送信してくれたことを私は知っている。
そして、彼が書いてくれているように、私には今、彼氏がいる。
大学で新しくできた彼氏。
すごく大切で、お互いに真剣で、将来は結婚しようと考えている。
これもまた、大人からしたら大学生の恋愛なんて、子供の恋愛だと思う人もいることも知っている。
でも私はそうは思わない。彼と絶対結婚するんだ。
そう思っていたのに。
今の私の状態を、私が理解できない。
浮気の定義は人によって違う。
浮ついた気持ちと書いて「浮気」
今の私は浮気をしているのか。
そう考えると苦しくてたまらない。
何度も何度も読み返して、
彼のメッセージにリアクションをして
そのまま連絡の履歴を消した。
今の彼氏に見られないように。
元彼との履歴を消すなんて彼氏に対しての裏切り行為で
それもまた私を苦しめた。
もうすぐ、大学2年生が終わる。
就活が本格化する。
メールボックスには就活に関するものが溜まっていた。
大人になんかなりたくない。
子供のままでいたいよ。
その思いが日々葛藤している、そんな中で
中学の同窓会が開かれ、
心が中学生の頃に戻った。
見た目はもう大人なのに。
今のこの気持ちは、元彼に対する恋心じゃない。
ただ、大人から遠い、
中学生の頃に戻りたいだけだ。
ライオン @mira20
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