なぜ過去に

@moguracyan

第1話

2000年の福島で暮らす父と息子。

しかし父には未来から来たという秘密があった。

時空を越え、1971年に飛ばされた親子は、過去で出会った人々と、未来の自分たちの運命を知ることになる――。

神様のいたずらか、それとも必然か。

見える世界と見えない世界が交差する中で、家族の選択が始まる。

第1章プロローグ

2000年3月  福島県福島市

冬から春への季節の変わり目だけどまだ福島の朝は寒い。空気は透き通るように澄み、吸い込んだ途端、鼻の奥がツンと痛んだ。朝チュンチュンチュンチュンと鳥が鳴く。起きようか。寒いけれど確実に朝の明るさが早くなっている。少しずつ福島の冬に慣れた。温暖化でも寒いものは寒い。今回の冬は雪かきの回数が少なくて助かった。家の前の駐車場を躊躇無くスコップで雪かきする。

「シオン、起きて。6時だよ。」

 「ねむい、もうすこし」

「だめ、ストーがついてるから暖かいよ、起きてくれよ。」

あ~あ、と言いつつ、思わず口元が緩んでしまう。抱っこして、ストーブの前に連れてきてパジャマを脱がしてしまう。すると、またシオンは毛布の中にもぐりこんでしまう。

「だめだよ。早く着替えないと遅れちゃうよ。」

毛布からシオンを引っ張り出す。それでもぼやーっとして動かないので着替えさせる。

「こらっ、シオン、もうすぐ2年生になるんだから着替えなんて自分でやらなくちゃ。」

 「う、ううん」

近頃、毎日この繰り返しさ。

息子のシオンは小学1年生。身長117㎝、体重17㎏と小さな方だ。私と息子は、かなり年が離れていて、おじいちゃんと言われても仕方ないくらいだ。いや、そんなこと絶対にいやだ。シオンが「パパ」と呼ぶ声がまたすごくかわいい。でも、「ママ」というあの甘えきった声には悔しいけれど負けてしまう。ちょっと残念だけれど母親の存在は仕方ないかな。

この話は、3人の家族が平凡に暮らしている話です。

2階から下に降りてお店のシャッターを開ける。

朝の光というか新しい風を肌に感じる。早く暖かくなってほしい。春が楽しみだ。息子が着替え終わって学校に行く準備をしてから下へ降りてきた。

「パパ、行ってきません」

「こら、行ってきますだろう」

いつものようにシオンを外で見送る。ランドセルを背負った小さな体がはなれていく。

息子の成長がよろこばしくもあり寂しさも感じる。

仕事を始めようと思ったところに玄関の扉を開けてこんにちは、と友人のえっちゃんがきた。

「久しぶりだね 治療してよ」

えっちゃんは、私が開業した頃からの患者で友達みたいで長くつきあっている人だ。

 若いときからマラソンを走っており、今も中学生相手に本気に走って指導者として活躍している。

「先生元気だった?」

「相変わらずだよ」

「まだ当たらない競馬でもやっているの?」

「まあね たまには、当たるけどね」

「なんだ昔とかわらないじゃないか、あははは。」

「 えっちゃん今日は、どんな感じかね?」

「背中がかなり張っていて疲れているんだよ。仕事が忙しいし 何だか自分に余裕がないように感じてね」

「仕事と練習で時間がないの?」

「いや、 そうではないけれど、もっと練習できないのかなと思って。」

「 でもえっちゃんも若いときみたいには、走れないだろう?」

「そうだね  無理だね。」

「仕事のことまで考えて走っていたらつかれるだろうね。」

「本当に小さなことでも笑っていた頃が懐かしいよ」

「うん 本当に何も考えずに笑える青春時代は、よかったね。」

「そうだね、たいしたことでもないのに笑っていたね。」

「確かにそんな感じだったよね。」

こうやって、えっちゃんの治療をしているときは、若いときの話から今現在の話まで話してしまう。

 ただいま!」と言ってシオンが学校から帰ってきた。

私の仕事場にくる患者さんは、シオンのことを知っている人が多くてよく声をかけてくれる。

「シオン君元気だったかい?」

声をかけられたシオンは、こっちを向いてからはずかしそうな顔をして「うん」 と 言って2階に行ってしまった。

えっちゃんが帰った後、パソコンでカルテの整理や検索をしていたら電話がなった。

「もしもし俺だよ俺だよ」

 受話器から元気な声が聞こえてきた。 同じバンド演奏を楽しんでいるもっちゃんと言うメンバーで

 ギターとボーカルを担当している。

「 こんどさ、 また音だそうよ。月末の日曜あたりどうかな?」

「うん、いいね。そうだな、3月になって少し暖かくなってきたからそろそろやってもいいかな?」

「新しい曲もいいけどやはりCCRはいいよね?ギターの手や指がリズムよくなるための曲だよね」

「確かに何度演奏してもいいね。」

「いいよ、 いいよ、 もうばっちりだぜ!」

「え 何がばっちりなんだよ。」

「ギターとボーカルは、まかせとけと言うことだろう。他のメンバーにも都合を合わせて聞いといてよ。」

「わかった  また連絡するからさ」と言って電話を切る。

みんなが集まるから時間の空いているときに俺もギターを練習しよう。ずっと弾いていないと指先がうごかないからな。

1日が終わり夜7時頃に患者さんがいない時間に治療院をしめる。シャッターの棒を入れるときには、シオンもきて私の手伝いをする。嬉しそうにシオンは、駐車場をぐるぐる回り走り始めた。

「シオンはいつも元気だな、手伝いにきたんだろう?」

「 そうだよ」 甲高い声で答える。

「なんだ 何もしないじゃないか」

「ちがうよ 、 手伝いにきたんだよ」

「うそつけ、 いま走っているじゃないか?」

「え~パパ違うよ。そばにいるときがパパの手伝いなんだよ。」

「なに言ってるんだよ、それは?」

そう言いながらシオンは、元気に駐車場をくるくる回っていた。

日曜日になると私は、早く起きて1階の仕事場で朝を過ごしている時間が多い。家族を起こさないで朝のお茶やコーヒーを一人で飲みながら仕事場で過ごす時間は、余裕があって私にとって好きな時間帯でもある。外は、まだ静かな朝で鳥やカラスの鳴き声がきこえてくる。店の前を走る道では、朝も早いので車が走る音は、まだ感じない。仕事場でパソコンを動かしていろいろ調べていると時間も忘れてしまう。

しばらく時間が過ぎると2階のママもシオンも起きたみたいだ。シオンは、私が2階の部屋にいないと着替えてから、2階からすぐ1階の仕事場にパパを探しに来る。寝起きで髪の毛がボサボサのシオンがやってきて、隣にちょこんと座る。

「パパ ずるいよ、パパ。コーヒー、ボクにも飲ませて。」ちょっと得意げな顔でシオンが言う。「シオンは牛乳でしょ。」「えー」と小さな不満の声。

「ぼくにもゲームやらせてよ。」

「ちょっと待っててね、今調べたらシオンにやらせてあげるからね。」シオンは、後10だよと言ってカウントを数え始める。

「パパ、  1 、 2、  3」

「なに言っているんだよ、そんなに早くパパのパソコンが終わるわけはないじゃないかよ。」

「だってパパは、朝早く起きてからずっとやっているじゃないか。」

「えっ、  シオンだって早く起きればやれるよ」

「じゃあ何で起こしてくれないの」?

「え! 何言っているんだよぉ。起こそうとしても起きないくせに。少しだけでいいから待っててよ。調べたいものがあるからさ。」

「ええ~、  嘘つけ。パパだってゲームをやりたいくせに。」って生意気に言ってくる。

「うん、少しは、あっているけどね。本当に調べているんだよ。だから少しテレビでも見てて、待っててね。」

「うん  わかったよ しょうがねえな。」

なんだかな?まったくシオンは、強がるような言葉を使うようになったなと思う。

[いいよ、シオン。パソコン使ってもいいよ」と言ってから私は、着替えにいく。

「やった!」

シオンは、喜んでパソコンのゲームをやり始める。私が着替えてから仕事場にくるとママとシオンは、楽しそうに二人でゲームをやりながら遊んでいた。

「ねえ、シオン、もう少ししたら出かけるよ」

「うん  わかってるよ」

ママは、含み笑いな感じで笑ってにシオンに競馬場にでも行くのでしょうとシオンに問いかけた。

「え、  なんでもないよ。」

シオンは、にやりと笑うからどこに行くかは、ばれてしまう。

ままは、くすくす笑った。

「ママ、  後で僕もゲームやるから。後でやらせてね。」

「もちろん」

競馬場までは、歩いて10分ぐらいで行けるので私にとってもいい散歩道でもある。

シオンも外に出かけるのが好きなので、見えない私と嫌がらないで私と一緒に出かけてくれる。

「じゃあ、シオン行こう。」と声をかけて私が先に玄関の外へ出る。シオンは、もっとママと一緒にゲームをやっていたいので私が行こうと言うと、ぶつぶつもんくみたいな事を言うけれど、実際外に出ると楽しそうに私と歩いてくれる。

「シオン、くつをはいて。」と玄関の外で待つ。

「パパ、待ってよ。今くつをはいているからさ。」

「イエーイ」と言って玄関からシオンは、道路へおりる。何も言わなくてもシオンは、私の手をとって

行き先を言わなくても歩き始めてくれる。

玄関を出ると小さな道をはさんで、高校の野球グランドがある。今日も1,2,3と声をかけ合って野球部の練習が始まり、金属バットから快音が響き、キャッチボールも声をかけ合ってやっている。

そのグラウンドを左に見ながらシオンとむじゃきに歩く。

「パパ、帰りに児童公園で少し遊んでもいい?」甘ったるい声。

「いいよ、競馬場に行ってすぐに戻ってきたら少し遊ぼうか?」

「うん、 うん」

「シオン、ここで左にまがるかい?」わざと言ってみる。

「えっ、何で? あ~、くっそう! パパなに言っているんだ僕は、幼稚園に行かないぜ」

「なあんだ。もう一度幼稚園で勉強しなおしかと思ったよ。」

「ねえ、パパ 。児童公園にたくさん子供がいるよ。」

「おまえも子供じゃないか」

「僕は、1年生だよ。」

「1年生だって子供なんだよ。」

「え、、、え~?」笑い。

児童公園の中を通り抜けて横断歩道を渡り左に二つ目の中学校を見ながら手を繋いで歩く。

競馬場の駐車場では、係りの人たちが「こちらへどうぞ、わたっても大丈夫です。」など忙しそうに誘導や車の整理をしている。競馬場の建物の中に入るといらっしゃいませと声をかけられ、馬券の販売機の音がフロアーの中に響いて忙しそうに感じられる。

シオンは、私の買う場所を覚えていてくれて窓口まで一緒に誘導してくれる。口頭で馬券を買えることは、便利だな。馬券を買った後、

「シオン帰ろうか。」

競馬場の出入り口から帰ると先ほどと同じように駐車場の警備の人たちの元気な声がきこえてくる。

児童公園の中に入ると子供たちは、大きな声で、はしゃぎながら遊んでいる。シオンに乗り物の切符を買ってきな、とお金を渡すと、シオンは、喜んで切符を走って買ってきた。

「パパ、飛行機に乗るから」といって私の手をつかんで誘導する。

「パパ、ここで待ってて。 ぼく乗ってくるよ。」

「うん、気をつけてね。」

スタートします、と言う係りの人の声がスピーカから聴こえると同時に飛行機は動き出す。回転しながら上昇していく飛行機からシオンは、下にいる私に向かって「パパ パパ」と手をふってくれた。

「パパ、今度は、滑り台に行こうよ。」

「いいよ。」

私の手をとってシオンは、楽しそうに滑り台の所に連れて行く。

「パパ、ここで待っていてね。」

私は、滑り台の中心部の鉄柱の所によりそって、シオンの無邪気な姿に喜んでいた。シオンは、滑り台の階段を登ったり滑ったりしながら楽しそうに遊んでいた。何回滑ったのだろうか、私にタッチしてはまた階段を登る。

何回滑り降りしたのだろうか?私は、なんだか気分が悪くなって鉄柱に背中をつけて座るようにしていた。

おかしいな、血圧でも高いのかな。なんだか耳鳴りも感じる。変だな、めまいもするような感じがする。

シオンの声や児童公園で遊んでいる子供たちの声が遠くに感じる。でも何かおかしいぞ。少し動悸もする。

心の中でシオン、シオン、ママと呼びかけていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

なぜ過去に @moguracyan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ