純白の魔法使い

@Dips0416

episode1 闇の彼方に秒針は進む

今から約1000年も前の話。


人類が築き上げた文明が滅びかけた時代があった…。

資料によると、魔王と呼ばれる生物が誕生したようだ。魔王は人の血や肉を欲し人類を虐殺していったのだ。

そして魔王誕生と同時に人類の中にマナを持つものが現れた。

それが始まりの勇者だ。


それ以来1000年に渡り今も魔王との戦いが続いている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


…お母さんッ!!……お父さん!!まってよ!!………どこに行くの…?


「ッ!?」

…またか。

そんな最悪な夢で私は目覚めた。

「…さて準備するかなぁ」

ベットから降りた私はいつも通り洗面台に向かった。

「あ…」

ふと鏡を見ると頬に涙が伝っている自分が写った。

あぁ…私はいつまで存在しないお父さんとお母さんに縋っているのだろうか…。

身支度を済ませて棚に置いてあったパンを一切れ取り出し、蜂蜜をかけて食べる。

「…懐かしい」

そう呟き私は玄関に向かった。

「行ってきます」

玄関に置いてある家族写真に向かって笑いかける。


国歴1825年 1月 20日

ヴィルバルド王国 国立魔導学園


「ねえアイリスちゃん!!」

「どうしたの?」

私に声をかけてきたのはこの学園で唯一の友達カレラ。私とは正反対で元気な子だ。

「あのさぁ〜今日の魔法元素の性質ってわかった?アタシはさっぱりわからなかったよぉ…」

そう言って悲しい顔をしたが

「それはカレラが寝てたからでしょ?」

カレラは授業中爆睡していた。

「げ!?バレてないと思ったのにぃ!」

寝ていたのは勿論、いびきまでセットとなると隠す所ないでしょ?と心の中でツッコんだ。

「でもアイリスちゃんってどうしてそんなに魔法詳しいの?毎回筆記試験とか一位じゃん?実技もいいし」

……私はお父さんとお母さんを奪った魔王を倒すために今までの時間を費やしてきた。

学園で一位じゃまだ足りない。

この国で一番でなければダメなんだ…。

「あはは…カレラも勉強すればできるようになるよ?多分ね」

「それ遠回しに勉強できないって言ってるじゃん!!」

と頬を膨らませてリスみたいになってるカレラを置いて私は学園の出口に向かった。

「待ってよぉ〜!」

…私はなってみせる。

この国を救う勇者一行に。…魔導士に。

「…い。お〜い?おーーーーーい!!アイリスちゃーん!!」

「ッ!?」

私としたことが、ぼーっとしてしまっていた。

「どうしたの?」

カレラ何か言いたいことがあるような顔をしていた。

「なれるよ。アイリスちゃんなら魔導士になれる!!信じてるよ!!」

その瞳はまるで憧れの人を見るような眼差しだった。

なんだか少し勇気をもらえた気がする。

「うん、ありがとうカレラ。またね」

「アイリスちゃんもまた明日〜!!」

そう言って私たちは別れた。

カレラのためにも、もっと頑張らないとな…

私は自分の杖に跨がり飛行体制に入る。

そしてそっと跳ねた。

風の加護により杖と私が前進する。

「やっぱり空は気持ちいいなぁ」

私は空から見渡す湖や平原、山が好きだ。

そして何よりこの絶景を彩る太陽がもっと好きだ。



どれくらい飛行していただろうか。

ざっと家まで半分くらいの距離くらいか。

「暗くなってきたしランタンでも付けようかなぁ」

もう日が沈みきりそうだ。星も出てきている。

ランタンをつけるならそろそろ頃合いかな。

『ギャァアアアアアァァォ』

ランタンに触れようとした時遠くから鳴き声が聞こえてきた。

「魔獣!?」

これは鳥種アシュバトだ。

嘘!?まだここは安全区域なはず!!進行がもうここまで!?

杖は空を飛ぶのに使っているので解除すれば落下する。

魔法を使うにも地上ならともかくここは空だ。魔法使いは杖がなければ威力が出せない。

しかも…

「何…?この数…嘘…でしょ……」

そこには数十…いや数百のアシュバトが群がっていた。

「逃げながら即詠をするしか…!!」

本来、魔法使いは杖を通して無駄な魔力ロスを補っている。杖が使えない今大幅に魔力を消費してしまう。

こうなったら…

「サンダー・レイン!!」

私は辺りに作用する雷魔法を唱えた。

それによりざっと5匹のアシュバトが感電し落下した。

『ギャァアアアアアァァォ!!』

たくさんのアシュバトが私に向かって襲いかかる。

「くっ!サンダー・レイン!サンダー・レイン!!」

いくら魔法を唱えようと無限に湧いてくるアシュバト。

ドカッ!!

アシュバトの一匹が私の杖に向かって突進してきた。

「きゃあ!!」

私はバランスが崩れて落下する。

真下は魔獣が多く生息する森だ。

こんなところで終わってしまうの……?


プツン。


目の前が暗転した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……んっ…。」

私は確か…。

「ぐぁっ!!」

突如足に痛みが走った。

足が…折れてるっ…!?

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!!」

痛い痛い痛い痛い!!

まるで足だけ燃やされているような感覚に耐えられない私は朦朧とする意識の中で服を少し破って足に巻きつけた。

「ふー!ふー!!……くぅ」

そして杖を持ちゆっくりと立ち上がる。幸い折れていたのは右足のみ。片足でゆっくりと歩む。

『ギャァアアアアアァァォ』

まただ。

まだアシュバトが私に近づいている…!

「嫌ァァァァァァ!!!!」

なんとか魔法をっ!!

「サンダー・レイン!!」

空の時よりかは威力はあるが真っ暗の中的中させるのは難しい。

「わたしは…私はこんな所で…。死ねないっ!!」



ざっと1時間近く経った頃。

「はぁ…はぁ……。」

私はほとんど魔力を消費した代わりに全てのアシュバトを討伐することに成功した。

街の場所もわからない。食べ物もない。助けも来ない。

「ははっ…もう動けないや…」

体が麻痺したかのように動けない。

私はここで終わるんだ。


ザッザッザッ。

遠くから足跡のようなものが聞こえた。

また魔獣がきた…


もういいや。

わたしは全てを諦めた。


すると

「あれ?偵察に来たんだけど女の子が怪我している?」

あれは魔獣ではなく人だった。

「大丈夫かい?」

中年くらいのおじさんだろうか。

「…た…助け…て」

私は生き残るために必死に助けを求めた。

「……」

男は黙り込んだ。

「アハハハハハ!!」

男は急に笑い出すとニヤリと笑った。

「こんな山奥にぃ?動けない女の子がヒトリぃ?周りには…誰もいなぁい!!と・い・う・こ・と・は?はぁ…はぁ…あははははははぁ!!」

と言いながら私にのしかかってきた。

「嫌ぁ!!やめて!離して!!」

男は気持ち悪い笑みを浮かべながらこう言う。

「こーんな可愛い女の子は初めてダァ!!くんくん。あぁ髪もいい匂いだなぁ!僕が!優しく犯してあげるからねぇ…?」

そして私のローブを剥ぐ。

「……!!いや…嫌ぁ……」

次に上着もゆっくりと剥いでいく。

「ククク…その顔最高だなぁ!終わった後はあっちの方に街があるんだ。そこで僕達で暮らそうっ!!なぁ良いだろう?」

と後ろの方を指差した。

「離して!!やだ!!誰か!!」

と必死に懇願するも、スカートのベルトをゆっくりと外されて、スカートも剥がれる。

「ァーーーー!!なんて美しい!!なんて素晴らしいんだ!!」

男は私の下着姿を見て下半身のテントを張らせる。

最低だ。

この世界を許さない…!!私を縛る全てを絶対に呪ってやる!!絶対に…!!

「僕も脱ぐねぇ?いいよねぇ?一つになろうよぉ?」

「あんた…みたいなおっさんとはしたく…無い!!」

男は顔を耳元に近づける。

「ヒヒッ…どうだ?俺みたいなおっさんに無理やり犯されるのは…興奮するだろう?」

「ハァ!ハァ!ハァ!!ハァ!!!!」

私は恐怖で呼吸がまともに出来なくなっていた。

「まずはその豊満な胸を触らせてよぉ!!」

と気持ち悪い動きをした手が私の胸に近づいてくる。

嫌だ!嫌だ!嫌だ!!嫌だ!!嫌…

その男の手が触れるか触れないかの刹那。


ザシュ!!


「あ?」

その音と共に男は地面に崩れ落ちた。

「…な…何?」

男の腹には大きな穴が空いていた…。

そしてゆっくりと私の手を見る。

血だ……。

「うっ…ヴェェェェェ!!ゴホッ…!!」

嘘…私、人を………?

私は顔を膝に疼くめた。

「ハァ…ハァ…ハァ…!!」

『ギャァアアアアアァァォ』

まだアシュバトの声が聞こえた。

「行かなきゃ…」

私はまだ死なない…この世界に、魔王を倒すまでは…!!

そしてもう誰も信用できない。信用しない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


王都派遣宿場街


「すまない。ここら辺で魔王や魔獣のの被害を受けたと報告があったのだがどなたか知らないだろうか?」

俺は宿場街の人々に声をかけた。

そしてこの街に住む人が俺に話をした。

「あんたは王国から派遣された騎士か?ここら辺だと森に狩りや伐採に出かけた人が居なくなることがたまにあるんだ。この前だって俺の兄貴も…」

その人の表情で何があったかは察せる。

「…それはどこの辺りて頻繁に起きているんだ?最近は魔獣が活発になっているから教えてくれれば俺が一人で行くよ」

俺は街の人にそう言った。

「あそこの森を少し進んだ所だな…気をつけるんだぞ少年」

「俺は少年じゃ無いぞ!青年だ!そちらこそ気をつけてねー!!」

俺は街の人に手を振り歩き出す。

…いつか俺が魔王を殺す。

「騎士さん!さっき偵察に行くとか言ってた傭兵さんがまだ戻ってきてないんだけど大丈夫ですかね?」

…まさか!!

「ありがとう!急がねばっ!!」

俺は全力で森に向かって走り出した。


ざっと1キロくらい走っただろうか。

足跡を頼りに走ってきたがここで足跡が途切れている…。

ふと周りを見渡した。

「ッ!!」

そこには大人の男の死体が横たわっていた。

「…まだ最近の血痕だな」

そしてよく傷の様子を見てみると…

「これは!?魔法による炎症…!?」

これは魔女がやったのか!?

「そんなバカな…」

この世界には魔王討伐のために存在する魔法使いと、王国を破壊するために存在する魔女がいる。

殺人となると魔女の可能性が高い…!!

もう少し進めば…近くに居るはずだ!!

そして数百メートル走ったことろで、別の血痕を見つけた。

「魔女も傷を負ったのか…?」

あの悪どい魔女が自分を傷つけてまで人を殺すのか?

「…あ」

何だ!?

唐突に声が聞こえたのでそちらを向くと、ボロボロの女の子が横たわっていた。

「君!大丈夫か!!…それにこの校章は!!国立魔導学園の…!?」

どうしてだ!?

なぜ魔導学園の子がこんなところで…?

「とりあえずここは危険だ」

女の子を背負い俺は宿場街に戻った。



《…ねぇアイリス?あなたはこの世界の希望よ…?》

《アイリス君はきっと大きな人間になれる…》

「ハッ…!!」

…今誰かの声が。

「おっ?起きたか?よかった!」

ここは?

「意識があるようで何よりだが、君は一人で森に突っ伏してたんだぞ?あんな危険な所で何してたんだ!!死んでたかもしれないんだぞ!!」

そう怒鳴ったのは金髪青色の瞳の男の子。

「あなたは…?」

私はなぜか名前が気になってしまい、咄嗟に口に出てしまった。

「俺か?俺は王国騎士団の4級騎士のクリスだ。そっちは国立魔導学園の生徒なんだろ?」

そう聞かれた私はこう答えた。

「ええ。そうね私は確かに国立魔導学園の生徒よ?それが何かしら」

なんで騎士がこんな所にいるのよ。

「俺は素性を明かしたんだお前も名前くらいは教えろよ」

何よコイツ。

「はぁ…。私はアイリス。国立魔導学園の2級魔法使いよ」

「単刀直入に聞くが、森にいたあの男。殺したのはお前か?」

……ッ!!

なんでそれを!!

「……ええ。私が魔法で殺した。仕方なかったのよ」

コイツが騎士団と繋がっているのだから私は牢獄にでも入れられるでしょうね。

…全くつまらない人生だわ。

「何があったのか教えてくれ。本当のことを知りたい」

彼の眼差しは真っ直ぐだった。

まるで私を疑っていないかの如く。

それから私は学園の帰りに魔物に襲われ、疲弊した所をあの男に襲われたことを話す。

そして恐怖で男を殺したことも…。

「これが今まで私があの山でしていたことよ」

男は黙り込んだ。

「……君、いや…アイリス。俺とパーティ組まないか?」



……………は?




episode1 闇の彼方に秒針は進む end

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