宇宙人の暇つぶし
御戸代天真
宇宙人の暇つぶし
地球から遥か彼方にあるX星。
何光年も退屈な旅を続けていたX星人の二人は、突如目を奪われた。まるで生命を宿すかのように青く煌めく、未知の星がそこにあったのだ。
「何だあれは。今まで見てきたどの星よりも美しいではないか」
一人のX星人が感嘆の声をあげると、もう一人が宙を漂う自分の触角を弄びながら言った。
「ああ、まったくだ。宇宙の片隅にこんなものがあったとはな。どうだい、暇つぶしにちょっと降りてみないかい?」
「それはいい。そうしよう」
二人はその美しい青い星──後に地球と呼ばれることになる場所へと、着陸を試みた。
小さな名もなき島に着陸した二人は宇宙船のハッチを開け、柔らかな星のかけらのような砂を踏み締めた。そして目の前に広がる、まるで特大のサファイアを溶かしたような美しい海に見惚れた。
それから二人は無邪気な子供のように砂浜を駆け回り、波打ち際で水面を跳ねる小さな魚を捕まえて遊んだ。一通り楽しんだ後、砂浜に座り込み、どこまでも広がる水平線を見つめていた。
ふと一人のX星人が、無聊を慰めるように呟いた。
「なあ、この星なかなか面白いじゃないか。何か『記念』を残して行かないか?」
それを聞いたもう一人のX星人も、深く頷いた。
「ああ、それはいい。何か持ち帰るのもいいが、残していくのも粋だね。
じゃあ僕は得意の彫刻で、僕の顔をかたどった巨大なモニュメントを、あそこ島にあった岩を削って作ってみようかな」
「じゃあ僕は、空から見た時に見つけた広大な平原をキャンバスにして、僕の好きな模様の生物でも描こうかな。船でもいいな。前に違う星で見た木も描こうかな」
そう言って二人は一度解散して、創作に没頭し始めた。完成するまで、お互いの作品は見ないという約束した。
それからX星人の感覚で数時間、地球の時間の尺度で言えば数十年という月日が流れた。
再会したX星人たちは、完成したお互いの作品を鑑賞し合い、心の底から褒め合った。
「いやあ、素晴らしいものができたね! 何体も作ったのに、一人として同じ顔がないのがこだわりを感じるね。こいつなんて粋な帽子を被せてるから、風格さえ感じるよ」
「いやいや、君の作った生物も素晴らしいよ。鳥のように見えて、足が何本もあるから躍動感があるね。船の絵も最高だよ。僕は特に、あの木が気に入ったよ!」
「いやぁ、いい旅だった。またここへ来よう」
「ああ、ぜひそうしよう。またここに来て、僕らが作った『記念』を見に来よう」
二人は満足げに宇宙船に乗り込み、遠い遠い故郷の星へと帰っていった。
それから数千年後。
多くの人類が、地上に描かれた広大な不可思議な絵と、人の顔のような巨大な石像の謎を解き明かそうと、日夜頭を抱えていた。
一方、X星人たちは遠い故郷で、楽しげに語り合っていた。
「なあ、あの作品たちは、まだ残ってるのかな? 気まぐれに作ったけど、意外と傑作だったよな」
「どうだろうね、作ってからもうだいぶ経つからね。壊れててもおかしくないよ。
でも、他の惑星でもそうだったけど、そこに住まう奴らはああいう無意味なものに、すぐ意味を見出そうとするから面白いよな」
宇宙人の暇つぶし 御戸代天真 @Pegasus
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