第一章 なぜ、この世界はカオスなのか

 この世界は、どう考えてもカオスだ。

 

 正しいことをしているはずなのに、誰かが傷つき、悪いことのはずなのに、誰かが救われる。

 

 あらゆることが矛盾し、どこか破綻している。


 何を信じるのかは人によって違い、何が幸せかも、人によってまるで違う。

 

 それなのに、私たちはしばしば「正解は一つであるかのように」振る舞ってしまう。

 なぜか「正解は一つでなければならない」というかのように。


 私は、この世界がカオスである理由を、「人間が愚かだから」あるいは「この世界を創造した神が愚かだから」だとは考えていない。


 もっと単純で、もっと構造的な理由が、きっとあるのだろうと思う。

 

 それは、この世界が「最初から一つの価値観で作られたものではない」からであるということだ。

 

 もし、「まったく異なる前提で作られた世界同士が重なり合った」のだとしたら、そこに生まれるのは「矛盾」ではなく、「カオス」なのがむしろ当然なのではないだろうか。

 

 逆説的に言えば、「矛盾していることが条件」として生まれたもので、「カオスであることが唯一の絶対条件」でなければ生まれなかったもの。

 それこそが、この世界であるとも言える。


 誰かが間違えたからではない。失敗作だからでもない。

 

 もともと、一つにまとまる必要のない別々のものが、ただ奇跡的に重なり、存在しているだけなのかもしれない。

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