社畜中年が転生したら手でした。

夏空蝉丸

第1話

 ちっとも命令を聞かない部下に対して、少しばかり怒鳴りつけただけのことなのに酷い目に遭った。パワハラなんかじゃない。どちらかと言えば、こちらがパワハラをされていたのだ。


 その不具合はあなたの責任ですよね。と言っても知らない。って言うし、ちゃんとなぜなぜ分析をしろって言ってもやらないし。品質報告会で説明しろって言ったのに会議をサボる。


 いい加減にしろ。くらい言っても普通だろ。普通だよね。


 ということがあり、俺は転生した。分かったんだよ。俺が死ぬ瞬間。そうなることが。


 で、実は少し期待していたのだ。憧れだったんだ異世界転生。おっさんの癖して中二病かよ。もし、部下に知られたらそう嘲笑されたに違いない。だから俺は会社では真面目な管理者としての態度を変えることなど無かったのだ。


 そんな俺が死んでから再び意識を取り戻した時、期待でわくわくしていた。異世界転生だから、貴族の子供として生まれるのだろうか。もしかして、王族? 第七王子とか?


 目を覚まして絶望した。転生先は『手』だった。しかも現生。


 ちょっと待てよ。おかしいだろ神様。どうして手なんだ? 自分で動くことはできないし、しゃべることもできない。手に目がついているわけではないから何も見れない。


 わかるのは音と感触だけ。耳が無いのにどうして言葉が理解できるのかはわからないが、皮膚に到達する振動を判断できるようだ。


「なんで自分が悪いんですか。あいつが、多少、仕事できるからって偉そうにしていた上司が悪いんですよ」


 どっかで聞いたような声だった。


「うるせえぞ。トイレくらい黙ってやれ」

「こんなときじゃないと自分の話、聞いてくれないじゃないですか」

「いいから早くしろ」


 俺は、何かを掴んでいる感触があった。何が何かはわからない。ただ、何であるかもしれないのであれば、これは復讐のチャンスでは? そう思って持てる力を全て使うことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

社畜中年が転生したら手でした。 夏空蝉丸 @2525beam

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画