第7話
翌朝。
彩葉は、目が覚めた瞬間に、
昨日のティンパニの音を思い出した。
(……トン、って)
あの小さな音が、胸の奥でまだ響いている気がした。
制服に袖を通しながら、
彩葉は自分の手のひらをそっと見つめた。
(……また、叩きたい)
その気持ちは、昨日より少しだけはっきりしていた。
家を出ると、空は薄い曇り。
風が弱く吹いて、髪が少し揺れた。
学校に着くと、ゆなが手を振ってきた。
「おはよー、彩葉!」
「……おはよ」
ゆなは彩葉の顔をじっと見て、
少しだけ首をかしげた。
「なんか今日、顔明るくない?」
「……そう?」
「うん。なんか、いいことあった?」
彩葉は、ほんの一瞬だけ迷った。
ひより先輩のことも、ティンパニのことも、
言葉にするにはまだ早い気がした。
「……別に」
短く答えると、ゆなは笑った。
「そっか。まあ、彩葉が元気ならいいや」
教室に入ると、
昨日よりも少しだけ心が軽かった。
(……今日、どうしよう)
放課後のことを考える。
また体育館に行くのか。
行かないのか。
行きたいのか。
行きたくないのか。
答えはまだ出ない。
でも、胸の奥では小さな音が鳴っていた。
(……行きたい、かも)
その“かも”が、
昨日より少しだけ大きかった。
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