関手で写りゆく私の人生
火之冬弧
関手で写りゆく私の人生
私は自分の望む人生を望んだ通りに生きてきた。
私は確か元々は兄、私、妹という兄妹構成だったと思うけど、ある日姉が欲しいと強く願ったら、次の日から兄は姉に変わった。
小学生の頃、隣のクラスの方がいいと思ったら、次の日から私は隣のクラスの一員となっていた。
中学生や高校生の頃は、クラスの他にも部活や委員会を転々とした。この能力なら、面倒な手続きをしなくていいから楽だった。
こんな感じで、私は物心ついたときから持っているこの能力で、ある程度望んだ集団の中に入り込むことができた。ただ、この能力はどんな集団にも入れるというわけではない。入りたい集団と似た集団に元々属している必要があるのだ。つまり、私が何かの部活に所属している状態でないと新たな部活に移ることはできないといった具合だ。
その他の特徴として、この能力を使うとき必ず夢をみる。夢の中で、何かが私の手をとってどこかへ連れていく。その夢から目が覚めると、私は望んだ場所にいる。
この能力を使って、私はこれまでに数えきれないほど多くの集団に属してきた。大学では学校や学部を転々としたし、最近は会社を渡り歩いている。能力の性質上、役職は大体決まっちゃっているけども。
ある日、いつものように新しい部署へ移ろうと思った。別に大した理由はないけれど、なんとなく青く見えたから移る。飽きたら戻れば良い。いつもそんな感じだった。
夜、いつも通り新しい自分の立ち位置や周りとの関係性を意識して目を閉じる。
その夢はいつもと少し違っていた。
何かに手をとられ、どこかへ行く私。それを私は眺めていた。
次の日、目を覚ますとそこは昨日までと変わらない部屋であった。
失敗? 夢が変わっていたことと何か関係があるのだろうか?
とりあえず、今の私の置かれている関係性を確認するためにスマホの連絡先を見てみる。
スマホの連絡先を見てギョッとした。そこにはたくさんの私の名前があった。そこにいる私の名前を持つ人物は、すべてかつて私であった人達だった。そしてその中には、今回私が移ろうと思っていた行き先の人物もいた。……私の名前で。
今までなぜ気づかなかったのだろう。連絡先の半数以上は私の名前で登録されている。バグや悪戯でないとしたら、これらの連絡先の先にいるのは私だということになる。新しく追加された私を含めて……。
目が覚めてくるのに従い、自分の置かれた状態がなんとなくわかってきた。
私が今まで使ってきたこの能力は、私を新たな関係性の中に写すのであって移す訳ではなかった。カットではなくコピーだったのだ。
写った先の私は望んだ組織の中で生きていく。私たちの存在に気がつかないまま。じゃあ元の私は?
あぁ、これまでの私もこんな気持ちだったのかな。
関手で写りゆく私の人生 火之冬弧 @fuyuko_hino
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます