にしん。

白川 優雨 (しらかわ ゆう)

にしん。

 判決が言い渡される。父は犯罪者になった。幾人かの傍聴人が、罪状を告げる裁判官の話を聞いている。無機質な言葉だけが、父に押し付けられた。

 私は靴を眺めながら帰路に着いた。朝に見た雲は、今は夜の海のような色になり、水たまりに写って揺れている。

 母の話では、父は控訴するらしい。拘留所に面会に行った時、何もしていない。そこにいただけだったんだ、と、ガラス越しに、嗚咽混じりで話していたと聞いた。

 自室に着き、机につっ伏す。カチカチと、針の進む音だけが聞こえる。父が買ってくれた、魚の形の時計。釣り好きの父が、また魚の家具を買ってくるもんだから、部屋には似た形のものが増えていた。




 目頭が熱くなる。握った手に力が入る。すぐにドアを開け、外に出る。本を買ってきて、机に投げた。ノートを大きく開き、文房具をばらまく。

 ニシンの時計は、まだ動いている。

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にしん。 白川 優雨 (しらかわ ゆう) @Syafukasu

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