英雄は報われない

@yamiyamiti

第1話 英雄候補

 今、私は燃え盛る炎の中で、戦闘を繰り広げている。いつまでも決着が着かない。永遠とも思える程に拮抗した戦いを。


「も、もももう良いでしょ。わ、私の勝ちです」

「もが多い!」

「ひぃ」


 気の弱い私のせいでサヤさん怒っちゃってる。どうしよ...。

 でも、私は対立している訳で、怒られても良い筈。

 それなのに胸が痛い...。


「本当に何でいつもいつも貴方は!」

「し、仕方ないですよ。私、基本は対立がき、嫌い...ですから...」

「そういう所がムカつくのよ」


 確かに、対立をしているのに気が弱いのは私が悪い。でも、それでも私には私の考えがあるのだから曲げたくない。

 けど、対立は嫌い。


「わ、私そこまで気が弱い訳じゃないです」

「何そのプライド!」

「っ!」

 

 変なプライドが働いたせいで余計な事を言ってしまった。何でこんな事を言ってしまったの!?私。


「へぇ〜、これを止めれる何て、本当に私の方が弱くなってしまったのね」


 危なかった。サヤさんの攻撃、まともに受けると意識が飛びそうになっちゃうから受けたくない。


「で、でも受けたら一溜りもありません」

「私を怒らせるの辞めてくれない?」


 え、何でさらに怒ったの?私悪い事何も言ってないのに。サヤさんの考えている事が分からない。怖いよぉ。

 でもここで一歩引いてしまったらもっと怒らせちゃう...。


「お、おお怒らせよう何て思ってません。サヤさんの勘違いです!」


 私は、両手を前に持ってきてグッと拳を握りながら目をギュッと瞑り、否定した。今まであまり言い返さなかった私だったけど、本気を出せばこのくらいは。


「うるさーい!」

「え、ええ?何で?」

「私が勘違いする訳無いでしょ?」


 あ、うるさいってそういう事か...。サヤさんの言う事は絶対って言いたいんですね。そうですよねー。


「はぁ。こんな言い争いばかりじゃ決着がつかないわ。終わらせましょう」

「ひゃ、ひゃい!」


 確かに話し合いだけじゃ決着はつかないけど...。話し合いで終わらせられれば良いのになぁ。

 私がそんな風に思っていると、まるで心を読んだかのようにサヤさんが怒鳴ったせいで、恥ずかしくなってしまうような変な声で返事をしてしまった。


「返事が小さい!」

「ひゃ、ひゃはい!」


 しっかり返事をしたけど、届いていなかったのかな。

殺し合いをしている訳では無いから、仲を悪くしたくない。私はそう思いながら必至にもう一度返事をした。次はしっかり聞こえた筈。


「変な返事は辞めなさい!」

「は、はい!」

「声が大きい!」


 一体何をやらされているのだろうか。私達、今魔法をぶつけ合って、傷つけ合ってる筈なのに、さっきから言葉でのぶつかり合いばかりだ。


「さあ、最後の一撃をぶつけ合いましょう」

「は、はい」

「最後に良い返事ね」


 別に殺し合いではないが、今まで何度も戦ってきたサヤさんとの決着を着けるのは悲しい。

 本当に最後になると思った私は、真剣に返事をした。


「はぁぁぁぁぁぁ!」

「え、えいやぁぁぁぁぁぁ!」


 本気で技をぶつけようとして大声を上げるサヤさんとは対照に、私はポンコツな声を上げて技をぶつけた。


 ☆


 7年前、私アスターは10歳の頃、魔法に目覚めた。これは喜ばしい事だ。しかし、悲しむ子も居た。

 10歳になっても魔法に目覚めない子も居たからだ。そう思うと、私は恵まれていた。


「わ、私に魔法...?これって良いこ、事なのかな」

「そうよ、羨ましい限りだわぁ〜」

「そうだね。僕も欲しかったよ」


 あの時の私は魔法と言う物をあまり知らなかったせいで、両親に良い事なのかというまるで煽るような形で聞いてしまった。

 両親は魔法を使いたかったが、才能が無かったらしい。


「期待してるから、頑張りなさいよ!」

「アスターの成長が楽しみだねぇ」


 煽るような事を言ってしまったせいか、両親の顔は少し引きつっている。しかし、別に怒っている訳ではなさそうだ。

 ただ、期待されている。でも私はそんな積極的な性格ではないから強くなったとしても何も果たせないだろう。


「そ、そんなに期待しないで」


 期待されればされる程、体に何か重い物がのしかかって来るような気持ちになった。そう、私は昔から気が弱かったのだ。


「あ、そうだ!今日は焼肉を食べに行こう!」

「良いわね、行きましょう!」


 いつもテンションの高い両親が、今日はさらにテンションが高い。それ程にめでたい事だったのだろう。


「ええと、良いの?」

「良いの良いの!」

「やったー」


 普段、あまり喜ぶ姿を見せる事のない私だったが、この日は素直に喜んだ。

 魔法を使えるようになる事が良い事だと知った事。そして今日の夜ご飯がが焼肉だという楽しみ。

 この2つは私からすれば嬉しかったのだ。


次の日。


「えっと...な、何これ」

「まあ、似合ってるわね〜」


 焼肉を食べたり、祝われたりと楽しい時間はあっという間に過ぎ、次の日となったが、私は嫌な予感がした。

 朝起きて椅子の上を見ると、そこには可愛いらしい制服が置いてあった。

 そして、嫌だと言えるような性格では無い私は、何も言わずに着替えた。ただ、着てすぐに親に褒められた事は嬉しい。


「あ、ありがとう」

「流石俺とお前の娘だ〜。彼氏とか作るなよ?」

「いやーね〜。あなたったらぁ」


 素直に褒められた事を嬉しく思い、感謝を伝えようとしたが、両親は私を放って楽しくお喋りをしていた。

 彼氏?そもそも、そんなのできるとは思っていない。

 2人は私に何をさせたいのか。恋愛?勉強?それとも魔法?


「まあ、取り敢えず楽しみなさい」

「わ、分かった」

「ふふ」


 制服を着たからか、学校に行くんだという実感が湧いてきた。

 お母さんにニッコリしながら楽しんできなさいと言われて、少し緊張が解けた。それでも、あまり他人と関わるという事を得意としない私は、ほんの少しの緊張が残る。

 人見知りな私はお店に行っても、店員を呼べないせいで、親としかご飯に行けた事が無い。


「お友達もいっぱい作るんだぞ!男はやめるように!」

「う、うん...」

「こら、アスターが本当に困ってるでしょ?」

「ああ、すまんすまん」


 いや、本当に私は男の人と喋る事ができないくらい人見知り何だけど、何で2人は気づいてくれないんだろう。私は、そんな風に思いながら学校の時間まで座って待っていると、お母さんから杖を渡された。

 これで魔法を学びなさいと言うのだろうか。


「これで魔法を学びなさい」


 ビンゴだった。でも、何でお母さんが杖を持っていてそれを私に渡すのか、よく分からない。


「何で杖を持ってるの?」

「私ね、魔法使いになって空を飛んで見たかったの。だから10歳になる前はウキウキでね」


 この先の言いたい事はもう分かる。だからあまり聞きたくない。お母さんの悲しそうにする顔はあまり見たくないから...。


「杖を持って毎日寝てたわ。でも、その日は来なかった...。だから叶えて。私の願い」

「うん、私、頑張る」


 やはり、お母さんは悲しそうな顔をしながら、魔法使いになれなかった話をしてきた。

 この世で、魔法使いになれる人は全体人口の30%。100人居ても30人しかなれない。そのショックから生まれ変わりたいと、神にお辞儀をしながら自殺をした人も居たと聞く。

 私は別に願っていた訳じゃない。だから、今すぐにでもお母さんに譲ってあげたい。


「それじゃあ、いってらっしゃい」

「うん、行ってきます」


 あっという間に時間が経ち、もう学校に行く時間になった。


「あ、バッジが傾いてるわ」

「ありがとう」

「頑張ってこいよ」


 外に出て見送りをしてもらおうとすると、バッジが傾いていると言われた。

 このまま学校に行けばいじめられるのではないかと思った私はお礼をした。


「お母さん、応援してるからね。帰ってきた時に笑顔を見せて」

「...?」

「お前、もしかして言ってなかったのかい?」

「あ」


 歩き出す前に、お母さんから何やら不穏な事を言われた気がした。

 頭の中にクエッションマークを浮かべる私に、気まずそうな顔をする両親。

 もしかしてとは思っていたけど、まさか。


「あなたは、学校の寮で暮らすの」

「え、そんなのいや...」

「でも、私の願いを」

「それでも嫌だよ!私、まだ家にいたいよぉ」


 衝撃を受けた。毎日家に帰って、ご飯を食べてお風呂に入って本を読んで音楽を聞いて、そんな毎日が大好きだった。

 だから、寮と聞いた私は今までに無いような大声で反抗した。

 親の言う事は絶対。そうやって生きてきた私にとって、この反抗は勇気を振り絞った一歩だった。



「何で!?私を捨てるの?」

「ええ、そうよ」

「な、んで...」

「おい、お前、何を言ってるんだい?」

「ほら、早く行きなさい」


 怒りの前に、涙が流れ始めた。まさかこの年で親に捨てられるとは思っていなかった。今からどうやって生きていくのだろう。どうやってお店に行って注文をすれば良いのだろう。

 そんな事を考えながら涙を流し、ゆっくりと歩き始めた。


『いつか、帰る。だって私は2人の娘なんだから』

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