完璧なアリバイの作り方(※死体付き)
@kageroumafin
プロローグ
ーー完璧なアリバイは、嘘を守るために存在する
その夜、雨は不自然なほど静かだった。
音を立てるべき水滴が、まるで遠慮するように
地面へ吸い込まれていく。
私は、死体の前に立っていた。
倒れているのは、まだ若い男だった。
白いシャツの胸元が赤黒く染まり、表情は驚いたまま固まっている。
抵抗の跡はない。争った形跡もない。
明らかに、殺されることを、最初から想定
してなかった顔だ。
「三谷先生」
背後から声がした。
警察の人間ではない。
それが分かるのは、この場で私のことを"先生"と呼ぶのは、たった一人しかいないからだ。
「この件、あなたにも見てもらいたいんです。」
私は、振り返らなかった。
代わりに、死体から少し離れた床を見つめる。
そこには、血のついていないスマートフォンが
落ちていた。
画面は割れていない。指紋も残ってない。
そしてーー電源は、事件発生時刻の三十分前に
切られている。
完璧だ。
少なくとも、警察の目から見れば。
「…犯人は?」
そう聞かれて、私はようやく口を開いた。
「いますよ。複数」
「複数?」
「全員、無実です。」
空気が一瞬、凍りついた。
その反応は予想どおりだった。
「彼らは全員、完璧なアリバイを持っている。
同時刻、別々の場所で、別々の人に目撃
されている。データも、ログも、証言も一致
している。」
私は一歩、死体に近づいた。
「でもーー」
胸元の血を、指でなぞる。
「このアリバイ、私が教えたものだ」
背後で、誰かが息を呑む音がした。
雨はまだ降っているはずなのに、世界はひどく
静かだった。
「そしてこれは」
私は断言した
「私自身の過去を、完全に隠すためのアリバイでもある」
その死体が、
予定より一つ多い理由を、
私は、まだ口にしなかった。
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