『追放された神童剣聖は、呪い装備で仲間の才能を解放する』

希凛邛

第1章 プロローグ 神に選ばれる日

 この世界には、絶対の秩序がある。


 人は生まれながらにして才能を持たず、

 その代わり、神から“役割”を与えられる。


 それが――

 スキルの取得の儀。


 十五歳を迎えた者が一度だけ受ける、

 人生を決定づける神聖な儀式だ。


 剣士。

 魔術師。

 治癒術師。

 召喚士。


 授かる職業とスキルによって、

 その者の価値も、未来も、立場さえも決まる。


 この国は、それを疑わない。


 ◇


 俺は、その日を迎える前から、

 “神童”と呼ばれていた。


 文字を覚えるより早く魔力を扱い、

 木剣を持たせれば大人を倒し、

 理論を教えれば、教師が黙る。


 称賛。期待。羨望。

 それらはいつの間にか、当たり前になっていた。


「きっと勇者様と同じ職だ」


「いや、それ以上かもしれん」


 そんな声を、何度も耳にした。


 俺自身も、否定はしなかった。


 なぜなら――

 自分が“普通ではない”ことを、

 薄々理解していたからだ。


 だが同時に、

 説明のつかない違和感もあった。


 眠るたびに見る夢。


 黒い剣。

 黒い鎧。

 触れた瞬間、心臓の奥に絡みつくような感覚。


 それは恐怖ではなく、

 懐かしさに近い。


「……妙だな」


 誰にも話したことはない。


 話せば、きっと笑われる。

 あるいは、恐れられる。


 だから俺は、

 その感覚を胸の奥に押し込めた。


 ◇


 大神殿の鐘が鳴る。


 それは祝福の音だ。

 神に選ばれる者たちへの、歓迎の合図。


 今日、俺はその壇上に立つ。


 神童として。

 期待の星として。


 まだ知らない。


 この日が――

 祝福ではなく、

 追放へ至る始まりだということを。


 そして、

 “呪い”と呼ばれる力が、

 この世界の常識を、

 根底から覆すことになるということを。


 神に選ばれる日。


 それは同時に、

 俺がこの世界から、

 切り捨てられる日でもあった。

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