第1話 スキルの取得の儀と、二つの呪い
この世界に転生してから十五年。
俺は一度も、自分が凡人だと思ったことはなかった。
剣を握れば、大人の兵士よりも正確に振れる。
魔力を扱えば、教師が目を丸くするほどの制御精度を見せる。
理論を学べば、書物の内容を即座に理解し応用できた。
人々は俺を「神童」と呼び、やがて勇者を支える存在になると期待した。
そして今日。
その評価が本物かどうかを決める日が来た。
王都中央神殿で行われる「スキルの取得の儀」。
十五歳を迎えた者が、神より授かる職業を知るための国家儀式だ。
神殿は祝福の空気に満ちていた。
貴族、神官、兵士、そして勇者パーティの面々までが列席している。
祭壇の前に立つと、神官が厳かに告げた。
「恐れず、心を静めなさい。あなたに与えられた運命が、今ここで示されます」
水晶に手を置いた瞬間、体の奥が熱を帯びた。
光が走り、神官が目を見開く。
「……職業、召喚士」
会場がざわついた。
希少職だが、戦闘力は低いとされる職業。
だが、まだ終わらない。
「ま、待ってください……判定が続いています」
水晶がさらに強く輝く。
「職業、剣聖……」
一瞬、時が止まった。
剣聖。
それは伝説級の職業であり、通常は一生に一人現れるかどうかの存在だ。
「複数職など、前例がありません……!」
神官たちが騒然とする中、空気が一変した。
祭壇の上に、黒い霧が渦巻いたのだ。
霧は形を成し、一本の剣となる。
漆黒の刃からは、はっきりとした禍々しさが伝わってきた。
「呪われた剣……」
誰かが、震える声で呟いた。
さらに霧は消えず、俺の体を包み込む。
次の瞬間、重厚な黒鎧が具現化し、俺の体に装着された。
「呪われた……鎧……」
神殿は完全に沈黙した。
祝福の儀式は、いつの間にか裁定の場へと変わっていた。
「これは異常事態です」
「制御不能の危険因子だ」
「勇者パーティに入れるなど論外」
向けられる視線が、期待から恐怖へと変わっていくのが分かる。
だが俺には、不思議と分かっていた。
この剣も、この鎧も。
俺を害するために在るのではない。
むしろ。
頭の奥で、何かが静かに噛み合った感覚があった。
呪いは拒絶されるものではなく、力として扱える。
そんな確信だけが、はっきりと残っていた。
その日を境に、俺を見る世界の目は変わった。
それが、後に勇者パーティから追放される前兆だったことを、
この時の俺はまだ知らない。
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