【絆結び】で始める異世界成り上がり無双 ~美少女と絆を結ぶとスキルを共有(コネクト)し、いつの間にか全員が全ステータス【無限】上昇し限界突破した最強パーティーになっていた~

おーちゃん

第1話

プロローグと転生




「おい、コウイチ。この資料、今日の夕方までになんとかならねえか?」



 時計の針はすでに午前二時を指している。もう何度目かもわからない上司からの無茶振りに、俺の意識は消えかかっていた。



 ほんとに嫌だな。ブラック企業に勤めて三年、残業は当たり前、休日出勤もノルマの一部。



 俺は社畜として、文字通り心身をすり減らしてきた。ああ、もう限界だよな。



 机に突っ伏した彼の視界は、資料の文字すら判別できないほどに霞んでいた。


 最後にかすかに見えたのは、パソコン画面に表示された「エラー」の文字と、自分の手のひらだった。



 その冷たさに、俺は抗うことなく意識を薄れていった。


 あれ、さっきまで午前二時だったはずでは?



 重い瞼をゆっくりと持ち上げると驚愕に目を見開いた。


 目の前に広がっていたのは、見慣れたオフィスの蛍光灯ではない。



 頭上には、透き通るような青空が広がっていた。


 周囲には、背の高い見慣れない木々が生い茂り、鳥のさえずりが響いている。



 鼻をくすぐるのは、都会のアスファルトの匂いではなく、しっとりとした土と草木の匂いだ。



 なんだ、ここは? 夢か? いや、触感がリアルすぎる!




 慌てて自分の身体を見下ろす。スーツ姿ではない。


 簡素な麻のシャツにズボンという、まるでRPGの初期装備のような格好だ。



 そして、自分の手。そこには、疲労とストレスで荒れ果てた25歳のサラリーマンの手ではなく、血色が良く、少しだけ肉付きの良い、見知らぬ青年の手があった。



「え?」



 混乱する頭の中に、唐突に、電子音声のような無機質な声が響いた。



 転生が完了しました。



 対象:コウイチ。



 肉体の再構成を開始します。



 肉体年齢:20歳。ステータスを開示します。



 俺の視界に、半透明のウィンドウが浮かび上がった。まるでゲームのインターフェースだ。



 転生ってなんだよ!まさかここは日本じゃないとか?



 肉体の再構成とか意味がわからないぞ。



【ステータス】

名前: コウイチ

種族: ヒューマン

年齢: 20

レベル: 1

HP: 100/100

MP: 50/50

筋力: 10

敏捷: 10

魔力: 5

耐久: 10

運: 1

スキル:

『絆結び(コネクション)』Lv.MAX




 ステータス?


 スキル?


 これって、もしかして異世界でよく見る奴か!



 前世でライトノベルや異世界転生モノの漫画を読み漁っていた。


 この状況は、まさしくそれらに登場する「異世界転生」そのものではないか。



 過労死したと思っていたが、どうやら俺は新しい世界で、新しい人生を歩み始めることになったらしい。



 信じられないが。



「嘘だろ」



 呟きながら、ウィンドウに表示された唯一のスキルに目を凝らす。



 『絆結び(コネクション)』Lv.MAX。



 なんですかこれ?



 漫画でも聞いたことないけどな。



 他のステータスは平均以下。


 特に運が1なのが悲しいのだが、このスキルだけはLv.MAXだ。



 これはチートスキルに違いないし、たいていはチートスキルの展開となるものだろう。



 ――スキル『絆結び(コネクション)』:信頼できる仲間と出会い、心からの絆を結ぶことで、相手の種族や特性に応じたスキルを自動的に獲得・派生させます。



 仲間が増えるほど、スキルのバリエーションと深度が増していきます。



 頭の中に、スキルの詳細情報が流れてくる。


 なるほど、他のゲームみたいに最初から無敵ってわけじゃないのか。



 仲間を作れってことかって、そんなリア充みたいなこと、ブラック企業勤めで培ったコミュ障の俺にできるのかよ。



 異世界転生という非現実的な状況よりも、仲間作りというミッションの方が俺にとってはハードルが高いよな。



 会社員の時も友達なんていなかったし、一人でスマホのゲームしてたからな。



 俺にとっては最強にハードル高いスキルかもしれない。



 しかし、文句を言っていても始まらない。ここは見知らぬ森の中だ。



 まずはこの場を離れ、人里を探すのが先決だろう。



 俺は立ち上がり、周囲を見渡した。


 自分が転生したことをようやく理解しつつあったその時、ガサガサと草木が揺れる音が聞こえた。



「え?」



 音がした方向を見ると、そこには血走った目をした、緑色の肌の小鬼――ゴブリンが三体、コウイチに向かって牙を剥き出しにしていた。



 マジかよ!



 まだ俺はスキルの恩恵を受けていないぞ。



 つまりは最弱のままなわけで、即時もあり得る魔物の登場となった。



「うわぁぁぁぁっ!」



 異世界漫画では、ここでチート能力が開花されて、魔物を瞬殺にするのが定番。



 そこで俺のスキルの出番であるものの、まだ何もスキルは獲得していない。


 まっさらな白紙のステータスです。


 ブラック企業で培った唯一のスキル「逃げ足」が発動する。



 情けないが、生きるためには恥など気にしてはいられないのか今の俺の置かれた状況である。



 異世界でのサバイバル生活は、こうして慌ただしく幕を開け、はたして仲間が出来るのかどうやら先が見えなかった。



 俺の異世界生活は、逃走劇から始まった。



 こんなの転生もののテンプレではないよな。



 ハズレスキルなのが確定したように思え、そうなると俺の人生は長くはない。



 あっさりと死ぬことも考える。日本では嫌なことばかりだった。



 せめて転生の人生は楽しく生きたいものだが、甘くはないようだ。




 ゴブリン。前世の知識では雑魚モンスターの代名詞だった。


 魔物にはランクがあるものだが、高ランクはドラゴンなどと決まっている。



 ゴブリンはオーガ族やオーク族よりも格下のランクなのが通例だろう。



 その低ランクなゴブリンが実際に目の当たりにすると、そりゃもう怖かった。



 体長は俺と同じくらいか、少し低いぐらい。


 手に持った石斧をギラつかせながら、奇声を上げて追いかけてくる。



「なんでいきなり戦闘なんだよ! 平和なスローライフはどこ行った!」



 ステータスウィンドウを開く余裕もなかった。とにかく走る。



 幸い、20歳くらいの肉体は思ったより軽快に動いた。これも転生の恩恵か。



 ブラック企業時代の疲れきった体とは雲泥の差なのはありがたい。



 しかし、ただのサラリーマンだった男。


 運動神経なんて皆無だ。すぐに息が上がり、足がもつれる。



 後ろからはゴブリンたちの恐ろしい笑い声が聞こえてくるような気がした。



「くそっ、捕まったらどうなるんだ。食われるのか? それとももっと酷い目に」



 想像するだけで鳥肌が立った。日本では絶対に考えることはなかった食べられるという恐怖感。



 逃げなきゃ。ただそれだけを考えていた。



 足元の木の根につまずき、俺は派手に転倒した。体が地面に叩きつけられる。



 痛みが走る。もうダメだ。そう思った瞬間、背後にゴブリンの気配が迫る。



「ひっ!」



 石斧が振り上げられるのが見えた。俺は恐怖で目を閉じた。


 ああ、転生した意味ないじゃん。こんなあっけなく終わるなんて。



 しかし、予想していた衝撃は来なかった。


 

 代わりに聞こえたのは、金属がぶつかり合うような「キン!」という鋭い音と、ゴブリンの苦鳴だった。



 何が起きたんだ?



 恐る恐る目を開ける。



 そこには、信じられない光景が広がっていた。



 俺を襲おうとしていたゴブリンの前に、一人の少女が立ちはだかっていた。



 誰だろう?



 彼女は獣人のようで、頭にはピンと立った大きな耳、腰からはふさふさとした尻尾が生えている。



 茶色の髪をポニーテールにして、軽装の革鎧を身につけていた。


 手には、俺が持ったら両手でないと扱えなさそうな立派な剣を構えている。



 まさか戦ってくれるのかい?



「グルルル!」



 少女は低い唸り声を上げ、剣を一振りした。


 残りのゴブリンたちが、まるで紙屑のように吹き飛ばされる。



「速い!」



 その動きは驚くほど素早く、そして力強かった。



 あっという間の出来事だった。


 ついさっきまで俺を追い詰めていたゴブリンたちが、地に伏している。



 少女は倒れたゴブリンを一瞥した後、ゆっくりとこちらを振り向いた。



 大きな琥珀色の瞳が、俺をじっと見つめる。



 ゴブリンの後は俺を殺すとか止めてくれ。


 ゴブリンに食われるのも嫌だが、剣で切られるのは痛そうだ。



「怪我、ないか?」



 少しだけどハスキーな声だった。



 俺はあまりの状況の変化についていけず、呆然と彼女を見つめ返していた。



 まるで映画のワンシーンみたいだ。俺は脇役で、彼女が主人公。


 典型的な出会いの構図だな、なんて場違いなことを考えていた。

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