「エルフ国へ進軍だ。調理兵を呼べ」

One単短

「エルフ国へ進軍だ。調理兵を呼べ」

エルフが守る広大な森は、我が国の発展を阻む壁だった。道は根に拒まれ、鉱脈は葉に覆われる。国策として侵略を重ねたが、森を舞台にした彼らのゲリラ戦は巧妙で、土地を目的とする以上、焼き払うこともできず、戦は数百年膠着していた。

転機は遠方から迎えた客将の一言だ。「サルとヒトの差は知ってるか」。間を置き、彼は答えた。それは料理だ、と。火は糧を柔らかくし、体への負担を減らし、食事に費やす時間と力を解放した。その余剰が思考と分業を生み、ヒトは行動範囲を広げ、発展した。

将軍は問う。「では、なぜエルフはサルから進化しているのか?」

客将は森を見渡した。「彼らは、森の息吹を力に変えるものと共生している。我々にも似たものはあるが、それとは比べられないほど深い共生だ」。

ならば切るべきは森ではない。その共生だ。料理が定着すれば、彼らは森に頼らず生きるようになり、自ら木を伐り、畑を拓き、道を作る。それはエルフの滅びである。将軍は命じた。「エルフ国へ進軍だ。調理兵を呼べ」。矢も剣も使わぬ戦が、湯気と香りとともに始まろうとしていた。

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「エルフ国へ進軍だ。調理兵を呼べ」 One単短 @onetantan

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