無口な勇者
禍々。
第1話 真夜中の洞窟
ぼくたちは今どこにいるんだろう。あたりは真っ暗で、湿った空気でいっぱいだ。変な声も聞こえる気がする。握っているヨルンの手は汗でびしょぬれになっている。いや、ヨルンだけじゃない。きっとぼくもおんなじだ。
「ねぇアラン...。僕たち帰れるよね...。」
「帰れるよ。帰らなきゃ...。ママが心配してる。」
ヨルンと夜中にこっそり家を抜け出して冒険ごっこをしていたら、この洞窟とその真ん前にあるケイヴナッツの大きな木を見つけた。ケイヴナッツはおやつにぴったりで、パパや叔父さんとよく採りに行くけど、街の近くだからここみたいにたくさんは採れない。ぼくたちは大喜びして山盛り持って帰ろうって話した。
ぼくは木の上によじ登ってナッツを振り落とした。ヨルンは木のすぐ下で待ち構えて拾う役目だ。最初は順調で、あちこちの枝に飛び移りながらケイヴナッツをたんまりゲットした。次の枝に移ろうと手を伸ばした時、下から悲鳴が聞こえた。
「うわあああ! アラン! 助けて!!」
声の方を見たらヨルンは大きな穴に落ちそうになっていて、細い木の根っこに必死にしがみついていた。
「ヨルン!!」
ぼくは急いで木を降りようと思った。想像してたより高いところまで来てしまっていて、ゆっくり下りないとぼくも危なかった。
「待ってて、すぐ行くから!」
「う、うぅ...アランはやく...」
ぼくは全力で木から降りた。ヨルンの手を掴もうと、思い切りダッシュした。でも間に合わなかった。
「わあああああ!!!」
「ヨルン!!!!」
ぼくはどうにかしてヨルンを掴もうと手を限界まで伸ばし、慌ててぐっと前のめりになってしまった。
「う、うわあ!」
ドサドサッ――!
「いったぁぁぁ...」
「うぐ...アラン...大丈夫...?」
勢い余ってぼくもそのまま洞窟の穴に落ちてしまった。思いのほか穴は深くなかったけど、岩肌には苔がびっしり生えている。壁は反り立っていて自力で上るのは難しい。
どうしよう...。こんなことなら来なければよかった...。隣で怯えているヨルンの手を僕は握る。洞窟の奥に進むしかない。もしかしたら外につながっているかもしれない。そう願った。
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