第2話 灯台の下の約束とオレンジジュース

翌日の汐見町は、めったにない晴れの日だった。


陽射しが教室の窓ガラスを透過して机の上に差し込み、秋也の古い詩集の上に斑々とした光の影を投げかけた。彼は破天荒に机に伏せて寝るのをやめ、頬杖をついて窓の外の青空を眺めていた。


空は水洗いされたように澄み切っており、綿菓子のような雲が幾つか浮かんでいる。運動場ではクラスメイトたちがバレーボールをしており、笑い声が爽やかに響いている。廊下では女の子たちがわいわいと新しい漫画の話をしており、開け放たれた窓から吹き込む風には、クチナシの芳しい香りが混じっていた。


これは、微笑みを浮かべるのにふさわしい日だった。


秋也の唇が、自分でも気づかないうちに緩んでいた。


「秋也くん、おはようございます!」


澄み切った女声が耳元で響いた。夏森柚は画用紙入れを抱えて笑顔で彼の隣の席に座り込んだ——彼女の席は、担任の先生によって彼の隣に移されたのだ。


秋也の心臓が一瞬、鼓動を止めた。彼は慌てて顔を向け、少女の輝く瞳と目が合い、頬がほんのりとあつくなった。


「オレンジジュースを買ってきました。飲みませんか?」夏森柚はカバンから二本の氷冷えのジュースを取り出し、一本を彼の手に渡した。「自動販売機でさっき買ったの、すごく冷たいですよ」


ガラス瓶のジュースには細かい水滴が結露しており、手のひらに貼り付けるとひんやりとした感触が伝わる。秋也はジュースを受け取り、指先が少女の指に触れた瞬間、まるで電気に触れたように素早く引っ込めた。


夏森柚はそれに気づかなかったように、瓶の蓋を開けた。「ポン」という音と共に泡が湧き上がってきた。彼女は一口飲んで、満足そうに目を細めた。「うまい!オレンジ味って、夏の味わいですよね」


夏の味わい——。


秋也は瓶のラベルに描かれたオレンジの絵を見つめ、母親のことを思い出した。母親はオレンジジュースが大好きで、毎回海へ行く時に必ず二本買ってきて、一本を彼に、もう一本を自分で飲んでいた。陽射しが母親の顔に降り注ぎ、その笑顔はオレンジジュースよりも甘かった。


胸の奥が何かにぶつけられたように、少し酸っぱく、柔らかくなった。


彼は瓶の蓋を開け、気をつけて一口飲んだ。


オレンジの甘みが舌の上に広がり、泡の爽やかな刺激が喉を通り抜けて、心の底まで甘く染み込んでいった。


「うまいですか?」夏森柚が顔を近づけて尋ねた。


秋也は頷き、今度ははっきりと二文字を口にした。「うまい」


声は小さかったが、十分に聞き取れる音量だった。


夏森柚の瞳が輝きを増し、まるで新大陸を発見したかのように言った。「秋也くん、話してくれました!」


秋也の頬がさらにあつくなった。彼は頭を下げて詩集を見ているふりをしたが、耳の先はもう赤くなっていた。


一日の時間が、まるで特別に短く感じられた。


授業中、夏森柚はこっそりと彼にメモを渡した。紙には変わった落書きが描かれている——居眠りをしている先生、舌を出している猫、それに詩集を抱えた小人の絵だ。秋也はメモを大事そうに詩集に挟み込み、指先でその歪な線をなぞると、唇が思わず上がっていた。


休み時間には、夏森柚が彼の手を引っ張って運動場の脇のクチナシの花畑へ散歩に行った。クチナシの香りが強く漂っており、夏森柚は一輪摘んで彼の耳に挿し、笑顔で言った。「秋也くん、花を挿した姿がとても似合っていますよ」


秋也の心臓がドキドキと激しく鼓動したが、拒否することはできなかった。


彼は夏森柚が花畑の中で走り回り、スカートが風になびいている姿を見つめた。まるで楽しい蝶々のようだ。陽射しが彼女の体に降り注ぎ、金色の輪郭を描いていた。


彼は突然、この世界が灰色だけではないのだと気づいた。


放課後のベルが鳴ると、夏森柚はすぐに荷物をまとめて彼の手首を引っ張って外へ走り出した。「急いで!遅れると夕日が見れなくなっちゃう!」


秋也は彼女に引っ張られて、よろよろと後を追った。彼女の手のひらは暖かく、まるで小さな太陽のように彼の冷たい指を温めてくれた。


にぎやかな通りを抜け、長い防波堤を歩き終えた時、彼らはようやく夕日が沈む前に古い灯台の下に到着した。


夏森柚は画用紙入れを置き、興奮して空を指差した。「見て!」


秋也は頭を上げた。


夕陽がゆっくりと海平面に沈み込み、一面の空を金赤く染め、また灰青色の海も同じ色に染め上げていた。波が滾れては金色のしぶきを上げ、遠くの漁船は一つ一つ小さなシルエットになっていた。巣へ帰る海鳥たちが群れをなして空を横切り、爽やかな鳴き声が響いていた。


これは彼が見た中で、一番美しい夕日だった。


「私が以前住んでいた場所には、海がありませんでした」夏森柚は石段に座り込んで膝を抱え、夕陽を眺めながらささやいた。「お父さんが画家で、汐見町の海は世界一優しい海だと言うので、私がせがんで転校してきたんです」


彼女は顔を向けて秋也を見た。「秋也くん、汐見町の海が好きですか?」


秋也は少女の瞳を見つめた。その中には金赤い夕陽が映り込み、そして彼自身の姿も映っていた。


彼は母親が言っていた言葉を思い出した——「秋也、見てごらん。この海はどんな嵐が来ても、翌日には必ず穏やかになるんだよ」


彼は口を開いて、はっきりと言った。「好きだ」


今度は、少しも躊躇いのない声だった。


夏森柚は笑顔で目を細め、三日月のようになった。「じゃあ約束しましょう。これから毎日放課後、ここで夕日を見るんです。私が絵を描き、あなたが詩を書くの」


秋也は少女の輝かしい笑顔を見つめ、何かが心の底から芽吹き出して、温かい液汁が全身に広がっていくような気がした。


彼は力強く頷いた。「うん」


夕陽は完全に海の底に沈み、空は金赤色から深い紫藍色へと変わっていった。星が一つずつ空に輝き始め、まるで黒いベロベロに撒かれた砕けたダイヤのようだった。


夏森柚は画用紙入れから絵筆を取り出し、スケッチ用紙にこの星空の下の海を描き始めた。秋也はカバンからノートを取り出し、ペン先を紙に落として一行を書き込んだ。


「星は海に降りて、橘の香り衣に纏う」


彼は隣にいる少女の側顔を見つめた。星の光の下で、彼女の輪郭はまるで絵のように柔らかかった。


彼は思った。もしかしたら、この無音の海にも、やがて優しいさざ波が立ち始めるのかもしれない。

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