第十二話

 時は遡る。

 野ばらは新たな使用人を雇用するべく、送られてきた履歴書に目を通していた。

 ある一人の履歴書で手が止まる。

 地味な見た目で、幸が薄そうな青年の顔写真。

「新しい使用人は、この青年にしようか」

 水島は首を横に振った。

「この者は鬼村の部下だと情報が入っております。考え直されては?」

「いや、相手に乗ってやろう。鬼村は、青年を捨て駒として送ってくるはず。なら、青年を貰ってもいいだろう? こんな純朴そうな青年、鬼村のような男にはもったいない」

「ですが、青年がこちら側に来ない場合もあり得ます」

「それはそれで面白い。昔の水島を思い出すな」

 野ばらは、からかうように水島に言う。

「もう、二十年前の話でございます」

「まだ、二十年前の話だ」

「野ばらさまには、敵いそうにありません」

「当然だ。生きている年数が違うからな」

 再び野ばらは履歴書を見る。

「綺上院の敷居を跨いだ者は、あたしの家族と同じ。この青年を、鬼村から助けるぞ。いいか、水島」

 水島は一礼をした。

「かしこまりました」

 数日後、百谷かけるが綺上院の新たな使用人として訪れる。

 

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