第十一話

 父方の祖父母に連絡したら、墓の場所を教えてくれた。

 僕は父の墓参りに来た。

 後悔している。

 父のことを知ろうとすればよかった。

 父ともっと話をすればよかった。

 父に会いに行けばよかった。

 鬼村から、父を助けることができたら。

 今も父は、生きていただろうか。

 叶わない未来を想像する。

 でも、時間は戻らない。

 父ともう、話しをすることはできない。

 父を殺した鬼村のことは、ずっと許せないだろう。

 それでも、前を向いて生きなければ。

 できれば、生きていた父に言いたかった。

「本当にごめん、父さん。また来るよ」


 僕は綺上院の屋敷に行った。

「かけるが気に病む必要はない。鬼村の悪行を止められなかった、あたしにも責任がある。もっと早くに手を打つべきだった。父親のことも、本当にすまない」

 野ばらさまは悲しそうな顔をする。

「野ばらさまのせいではありません。悪いのは鬼村です。それに僕は、父を助けられなかった。もう、父のような人を放ってはいけない。

 僕は、父のように苦しめられている人を助けたい。野ばらさまと水島さんが僕を助けてくれたように。

 お二人とも、本当にありがとうございます」

 僕は野ばらさまと水島さんに頭を下げた。

「顔を上げろ。前にも言ったが、あたしは不老不死だ。

 綺上院の名前は裏社会で知れ渡っている。今回ようなことが、今後もあるだろう。

 かける。それでもよければ、あたしの使用人でいてほしい。もっとも、手放す気はないがな」

「よろしいのですか? 野ばらさまをだまして、殺そうとしたのに」

 僕が言うと、野ばらさまは頬を膨らませる。

「かけるは、あたしの大事な使用人だぞ。信じられないのか?」

「いいえ。僕は野ばらさまを信じております。これからも、仕えさせていただきます」

 僕は一礼した。

 野ばらさまは満足そうに笑う。

「そうか、そうか。よろしく頼むぞ、かける」

 僕は野ばらさまの笑顔を、お近くで見ていたい。

「しかし、野ばらさま。今回の件で賞金の額がまた上がるのでは?」

 水島さんが言う。

 そう言えば、野ばらさまは賞金十億を賭けられている。

 いくら不老不死でも、狙われているとなれば心身に悪いだろう。

 野ばらさまは考える仕草をし、人差し指を立てた。

「いっそのこと、賞金百億まで目指すか!」

 もっと深刻に悩んでいると思っていたのに。

 むしろ楽しんでいないか。

 野ばらさまは、水島さんと僕を見た。

「水島、そろそろケーキが食べたいぞ」

「かしこまりました」

 水島さんは野ばらさまに一礼をする。

「かける、紅茶を淹れてくれ。いいか?」

「はい。ご用意します」

 僕も野ばらさまに一礼をした。

 僕の主人は賞金十億を賭けられた、二百年を生きる不老不死である。

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