第八話

 鬼村の元に僕は行った。

「やっぱり、僕は殺しなんて、できません」

「そうか。お前も父親と同じで使えない駒だな。だましやすいところも一緒だ」

「まさか……」

「自分がこんなだから、妻と息子に苦労ばかりかけたって。泣きながら、死ぬまでお前らに謝ってたぜ。聞こえやしないのにな。その後、川に捨ててやったよ」

「父さんを殺したのか!」

 鬼村の部下に頬を殴られた。

 血の味がする。

 口の中を切ったらしい。

「今まで、父親のことを放ったらかしにしていたお前が言うのかよ?」

「そ、それは……」

 鬼村の言う通りだ。

 言い返せない。

「優しい俺が、父親に再会させてやる。まあ、お前が本当に綺上院野ばらを殺したところで、結果は同じだがな」

「約束と違うじゃないか!」

 鬼村の違う部下に、今度は腹を殴られた。

 立っていられず、床に膝をつき、咳込む。

 頭上から鬼村の声が聞こえる。

「嘘はついてないぞ? 生きていることから自由にしてやるんだからな。父親のように」

「……っ!」

 鬼村は、げらげらと笑った。

 はじめから、そのつもりだったのか。

 まんまと、だまされた。

 父もだまされて、借金を負わされていたのか。

 鬼村に殺されて。

 父さん、ごめん。

 母と祖父母の顔を思い出す。

 ごめん、一生懸命、育ててくれたのに。

 野ばらさま。

 だまして、殺そうとして、申し訳ありません。

 その時、大きい音を立てて誰かが部屋に入ってきた。

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